健大のヤマピーが新「満塁男」だ。引き分け再試合となった2回戦2試合が行われ、高崎健康福祉大高崎(群馬)山下航汰内野手(2年)が今大会2本目の満塁本塁打を放った。1大会で2本の満塁弾は大会史上2人目の快挙。再試合を含めた3試合で計11打点と打棒はとどまるところを知らない。投げては向井義紀投手(3年)が公式戦初先発で完投。10-2で福井工大福井に大勝し、2年ぶりの8強入りを決めた。

 甲子園に新「満塁男」が誕生した。4回2死満塁、山下が憧れのDeNA筒香ばりの強振で、右翼席にライナーで突き刺した。今大会2本目の満弾で、15年の敦賀気比・松本哲幣以来2人目の快挙だった。「すごくうれしい。気持ち良かったです」。淡々とした口調は、筒香が漂わせる雰囲気とどこか似ていた。

 侍ジャパンの雄姿が、野球への道を切り開いた。サッカー少年だった小学3年時に第2回WBCでの日本の優勝に感激し、父政司さん(44)に「野球がしたい」と訴えた。今センバツ中も、自らを導いてくれたWBCをテレビ観戦。打撃フォームの連続写真をファイルに保存する筒香の姿を追った。

 昨夏の屈辱が、山下を変えた。群馬県大会の決勝の前橋育英戦。同点の9回1死一、二塁で「気持ちの面で負けた」ハーフスイングで空振り三振に倒れた。「ゲッツーになったら…と。今は自分の1本で導くと思っている」。公式戦は0本だったが、甲子園で2発。今月8日に解禁後の練習試合でも満塁弾を放つなど、満塁フィーバー中だ。

 延長15回の死闘後は、宿舎到着後すぐに試合のビデオを見返し、メンバー全員で近くの銭湯の湯船につかった。常連客から「おっ、健大やんか。頑張れよ」と声を掛けられ、しっかり疲労を取ったことも、好結果につながった。

 大阪桐蔭・根尾、早実・野村ら「黄金世代」が注目される中、また1人、実力者が名乗りを上げた。山下は中学時代にジャイアンツカップで優勝。世代最強チームの座を奪ったが、個人の注目度では先を越された。「同級生なんで、負けたくない」。心の奥底で同世代対決に闘志を燃やす。

 実家では、中学時代に放った約20球のホームランボールをガラスケースに入れ飾っている。満塁弾2本のボールは「1つは自分。もう1つは両親に」と笑った。同い年の今井によれば、あだ名は「ヤマピー」。夜の宿舎で黙々とバットを振る大砲が、「機動破壊」のイメージを塗り替える。【久保賢吾】

<山下航汰(やました・こうた)アラカルト>

 ◆出身 2000年(平12)11月15日、大阪・柏原市生まれ。家族は父、母、弟。

 ◆野球歴 小3から野球を始め、中学時代は羽曳野ボーイズで通算22本塁打を放ち、3年時にジャイアンツカップで優勝した。高崎健康福祉大高崎では1年夏から4番を任され、高校通算12本塁打をマーク。

 ◆サイズ 174センチ、77キロ、右投げ左打ち。

 ◆利き目 両目ともに視力は2・0で利き目は左。ボールを見えやすくするために、打撃フォームはオープンスタンスで構える。

 ◆憧れの選手 DeNA筒香。「足の使い方などを参考にしています」。

 ◆好きな言葉 継続は力なり。青柳監督は「努力家で夜に素振りしている姿をよく見る」。

 ◆趣味 音楽鑑賞。

 ◆資格 珠算3級、暗算4級、剣道4級。