第90回記念選抜高校野球大会(3月23日開幕、甲子園)に21世紀枠で選出された由利工(秋田)が12日、茨城・高萩市内での第1次合宿を打ち上げた。土のグラウンドで行う今年初練習で、ひと冬越した鍛錬の成果に早くも手応え。昨秋の主力だった、菊地浩介、土井幹太、石原龍之介(いずれも2年)の外野手トリオが、持ち味の快足と鋭い振りで甲子園初勝利をつかみとる。

 カキーン。久々に響かせたグラウンドでの打球音。先陣をきったのは菊地浩。「確実性を上げたいと思ってやってきた。イメージ通りというか予想以上にとらえることができた」。左打席から逆方向に安打を放ち、会心の笑顔があふれた。例年より雪が多くて外で練習できなかったが、1日500スイングをノルマに振り込み、フォーム固定に重点を置いた成果だ。

 昨秋は5番を打つことが多かったが、50メートル6秒2の走力にも自信。環境システム学科でワープロ検定やパソコン入力スピード検定2級を取得するなど、足も手も速い。「足が売りなので、走塁やセーフティーバントでも貢献したい。1番バッターで甲子園に出場したい気持ちもある」。試合を想定したシート打撃で自発的に1番打者に立候補し、アピールした。

 チーム最速6秒1の土井も続いた。11月から約2カ月間は通常より重い約1キロのバットを振ってきた。右打席からセンター中心に打ち返し、エース佐藤亜蓮(2年)の速球にも振り遅れはなし。「勝負強さと確実性を求めてきたが、集中して強い打球が打てた」と手応えを得ている。

 4番の石原も逆方向の左中間に低い打球を飛ばした。秋より勢いを増し、フェンス到達。積極的な走塁で三塁打。「甘い球を確実にとらえて、ランナーをかえしたい」。公式戦チーム本塁打は0だが、柵越えも狙える存在になりつつある。

 鋭いスイングに足を絡めて、少ない好機を得点につなげる。地元・由利本荘市の市鳥は、鋭いくちばしと素早い動きで鬼退治でも活躍したとされるキジ。渡辺義久監督(39)も「思った以上に確実に捕らえられている。攻撃力を上げないと全国で勝つ可能性はない。菊地が1番でやってくれれば理想的な打線」。3月からは沖縄合宿で実戦経験を積み「キジ打線」で甲子園で“鬼退治”に挑む。【鎌田直秀】