第100回全国高校野球選手権記念大会(8月5日開幕、甲子園)の山形大会が12日から開幕する。「白球にかける夏」第4回は、東海大山形、東海大翔洋(静岡)で春夏計9度の甲子園出場に導いた滝公男監督(62)率いる山形学院を特集する。指導を求めて集まった「滝チルドレン」が3学年そろった就任3年目の夏。シード校を撃破し、初出場に挑む。

 滝監督が部員51人を集めて声をかけた。対戦相手も決まり「やるのは、お前たちだぞ」。時には厳しく、時には優しく指導。「個々のバットを振る力、ゴロを捕って投げる基本的なプレーはうまくなってきている」。そう成長を認める一方で、「応用が利かない。状況判断ができない。いい子ちゃんが多いんだよね」と苦笑いも浮かべた。

 昨秋は就任後最高となる県8強。だが、日大山形に0-11と大敗した事実もあった。「目標は甲子園出場」。“途中結果”に満足してほしくなかった。春季大会前、緩慢な練習態度に選手の錯覚を察し、約2週間、選手たちを突き放す荒療治に踏み切った。地区予選で1勝も出来ずに2連敗。県大会出場すら遠い現実。主将の黒田凌太郎捕手(3年)は「夏への危機感を感じた。言われたことだけをやるのではなく、自分たちで考えられない甘さが全部出た。もう1度、自分も引っ張らないとと必死になれました」。監督の狙い通りだった。

 東海大山形を率いた85年夏のPL学園戦。エースがケガを抱えて登板し7-29と大敗の中でも、7回まで無失策と集中力を継続した。母校・東海大翔洋(現東海大静岡翔洋)では、04年夏に初出場。「過去の話は、ほとんどしていません。今の生徒と状況が違いますから」。両校時代は付属校ゆえに「(東海大)相模に負けるな」を合言葉に気持ちを高めて、努力を重ねられた。山形学院では私生活の態度から徹底し、野球の向上を促した。

 エース右腕の大場勇飛(2年)は「目線を下げて的確な助言をいただけるし、『私生活そのものが野球に直結する』の言葉は胸に響きました」。あいさつ、授業態度に加え、通学電車では席に座らないことも決めた。「監督さんのために勝利したい気持ちが、みんなにあります」と力を込めた。

 13日の1回戦に勝てば、3年連続で2回戦にシード校が待ち受ける。滝監督は「甲子園に出る出ないもあるが、堂々と『学院を卒業した』とプライドを持てるようになってほしい。でも(山形)中央は食いたいよね」。闘志は内に秘め、目尻を下げて教え子を見つめた。【鎌田直秀】

 ◆山形学院 1908年(明41)創立。普通科、情報科、調理科がある。生徒数は777人(うち女子465人)。野球部は1985年(昭60)創部。主な卒業生は伊藤マサミ(脚本家)、栗原祐樹(サッカー選手)。所在地は山形市香澄3の10の8。北垣俊一校長。