高校野球100回大会の日刊スポーツ「編成部長」を務める前ロッテのサブロー氏(42)が8日、群馬・前橋市で高崎健康福祉大高崎・山下航汰外野手(3年)をチェックした。今夏の全国最多とされる高校通算74本塁打の源と課題とは。

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 「1番左翼」で先発した山下は、本塁打は出なかったが二塁打2本で計3打点を挙げた。打撃で素晴らしいのは、理想的なレベルスイングができること。ホームベース上を真っすぐ、地面と平行に、力強く振れている。テニスのラケットを持ってバッターボックスに立つ姿を思い浮かべてほしい。正面から来るボールに対して、スイングが上や下からだとミートポイントは点になるが、面でとらえるからヒットゾーンが長くなる。大阪桐蔭のドラフト1位候補、根尾よりもスイングの軌道は美しい。

 第4打席の中越え二塁打は、視線や姿勢は引っ張りの体勢なのに打球がセンターに飛ぶ“あっち向いてホイ打法”になった。かつての中日和田選手がそうだった。これもレベルスイングができている証拠。バットとボールが当たる位置が捕手寄りなら、打球は中堅から左翼方向へ、投手寄りなら引っ張りの打球になる。

 だからこそ残念なのは守備の意識だ。左翼では打者が打つ瞬間も突っ立ったままだった。プロはステップを踏み、打つ瞬間は軽く両足ジャンプして1歩目のスタートに備える。打撃だけなら2軍で首位打者争いできるレベルだが、1軍に上がるには守備、走塁を含めた総合力が問われる。PL学園時代、中村順司監督に巨人のモスビーを手本にしろと言われ、常にステップを踏んで1歩目に備えた。意識はすぐに変えられる。

 その点、素晴らしかったのは「3番遊撃」の大越だった。第2打席で逆方向の右中間に推定130メートル弾を放った。すぐに動画で巨人坂本勇の高校時代を見たが、打撃は同等レベル。178センチ、73キロと細身だが、坂本勇のように内角のボールに対してクルリと体を回転できる。柔らかさ、腕のたたみ方もいい。スローイングも安定していた。将来的にプロで長く活躍するのはこういう選手かもしれない。【取材・構成=前田祐輔】