両手で地面をたたいた。単独廃校ルールで立正大立正から大田桜台に派遣された小坂拓海内野手(2年)が7回2死一塁、1番和田光太郎主将(3年)の右翼へのテキサスヒットで一気に本塁生還を試みヘッドスライディング。惜しくもアウトになった。「点を取らないと負ける。何が何でも帰ろうと思った。申し訳ない気持ちです」と涙を流した。

 小坂は約2週間前、部員が8人しかおらず試合に出られない大田桜台に“助っ人”として派遣された。「コミュニケーションが取れなかった」と初めは慣れないチームに警戒心を抱いたが、打ち解けると「監督さん含めみんなが優しかった。1週間くらいで大田桜台の野球が楽しくなった」と振り返る。

 初戦は10人目の選手として、裏方に徹した。「選手がプレーに全力を尽くせるように、裏方の仕事は全部やろうと思った」。その言葉どおり、この日も経験のない控え捕手まで務め出番を待った。7回1死ついに出番が回ってきた。代打で出場し「初球から打とうと思った」と初球からフルスイング。2球目を中前に打ち返した。

 試合後、和田主将から「2人のおかげで試合に出られた」と、渡部竜成内野手(2年)とともに感謝の言葉をかけられた。それを聞いた小坂は、ますます涙が止まらなくなった。「もっとこのチームでやりたかった」とチームで1番涙を流した。心からチームの一員になっていた。「大田桜台さんからは努力の大切さを教わった。(派遣選手)に選んでいただいてよかった」。この経験は必ず生きるはずだ。