春夏連続甲子園出場を目指す智弁学園(奈良)が快勝スタートを切った。主将の小口仁太郎捕手(3年)が大会前に右肩を負傷。そのピンチを救ったのは、1年生捕手の佐藤尊将だった。打っては7回に公式戦1号ソロ、守っては完封リレーを好リードで支えた。

 1年生捕手が緊急事態を救った。主将で捕手の小口が大会2週間前の練習中に右肩を負傷。代わりに入った1年生捕手の佐藤が攻守に存在感を見せつけ、甲子園春夏出場へ好スタートを切った。

 公式戦出場はわずか1試合の佐藤だったが、この試合ではエースの伊原陵人投手(3年)を好リード。「毎回配球を変えようと(伊原と)話していた」。毎回の12奪三振で7回を3安打無失点。小坂将商監督(40)も佐藤について、「しっかり会話できるし、心配することがない」と賛辞を送った。

 最大のピンチは継投に入った8回。2番手の三田智也(1年)が制球に苦しみ無死一、二塁とした場面。しかし、佐藤は冷静だった。「自信がある」という強肩で、飛び出した二塁走者をけん制で刺し、ピンチの芽をつんだ。

 バッティングでもアピールに成功した。7回の第3打席。前の2打席はともに三振に倒れており、監督から「思い切り振れ」と指示を受けた。その言葉通り、真ん中にきたストレートを豪快にスイング。公式戦1号が飛び出し、ベンチに帰って笑みがこぼれた。

 前夜は眠れず、ネガティブな思いが頭を駆けめぐった。「準備はしていたけど、すごく緊張した」。そう明かしたが、試合では違った姿だった。中学時代は全国大会で3位。U15日本代表にも選ばれ、海外のチームとプレーした。「あのときの経験はだいぶ大きい」。夏大会の初戦という重圧をものともしなかった。

 ベンチから後輩の奮闘を見守った小口も「バッターのタイミングを外していたので、よかったと思う」と振り返った。「小口さんが帰ってくるまで、自分がチームを支える」。新たなピースとともに甲子園春夏出場を目指す。【林亮佑】