甲子園夏連覇を狙う花咲徳栄が勝ち、ベスト4入り。4年連続の甲子園まで、あと2勝とした。

 偉大な先輩の熱いピッチングが、スーパー1年生のスイッチを入れた。高校入学後すでに9本塁打の井上朋也外野手(1年)は、この日の第2打席まで8打席連続でヒットがなく、打席でも相手投手の緩急への対応に苦笑いするケースがあった。初めての高校野球夏の大会で、体力的にも疲れ始めていた。

 その井上の目に、エース野村佑希投手(3年)の熱投が映った。プロ注目の強打者として相手投手に厳しい攻めをされながら、マウンドでも躍動している。「野村さんの姿を見て、自分も調子が悪いけれど、何とかしなくちゃと思った」と井上。第3打席は遊撃へのゴロだったが、全力で駆け、一塁へ公式戦初のヘッドスライディング。内野安打としたその顔は、砂ぼこりにまみれていた。

 第4打席では中前安打を放つと、勢いよくオーバーラン。相手守備の緩慢さを確認し、普通の安打で一気に二塁を陥れ、先輩たちを盛り上げた。岩井隆監督(48)は「井上は、まだ無邪気なところがあるんです」と困った素振りを見せることもあるが、この日の闘志には「やればできる子です」と褒めた。あと2勝で甲子園。チーム力は高まっている。【金子真仁】