向上が16強で涙をのんだ。8回裏2点差に迫り、なお無死一、二塁。全校応援でないにもかかわらず、超満員のスタンドからチャンステーマ「サンバ」の大合唱が響いたが、自分たちのミスで1点止まり。あと1歩届かなかった。

 総部員127名をまとめるのが砂川俊輔主将(3年)。昨夏、40名近い3年生の中で、数少ない一般入試で入ってきた砂川が主将に選出された。話し下手だったが、コミュニケーションを自分から積極的に取るよう意識した。人数が多いため、打撃・守備・データなど各部門ごとにグループを決めて練習を管理している。

 「総長」である砂川は各リーダーと毎日のようにミーティングをして、コーチや部長・監督に伝えた。「落ち着いて周りを見ながら引っ張ってきた」と自覚も芽生えてきた。試合後、砂川は「皆がいろんなデータを出してくれて、たくさんの応援も追いつける雰囲気を作ってくれた。点が取れたのも彼らのおかげ。でも期待に応えられず残念」と涙をふきながら語った。

 打撃部門のリーダーである与倉良介外野手(3年)は、リーダーになるのは人生初だという。「打てないとチームに迷惑をかける」と不安だったが「嫌われてもいいから」と気付いたことを言うようになり、月に1本程度の本塁打が10本近くまで増えた。

 つられて自分の打撃力もアップした。前日には父・貴彦さん(46)とシャトルで打撃練習を行い、当日の朝「ホームランを打ってくる」と家族に言って家を出て、第1打席に有言実行した。2球目を捉えた打球は「自分でもびっくり」という逆方向への本塁打。リーダーとしてチームに勢いを付けた。6回表打球を追って足がつり、担架で運ばれたが、治療して戻ると大声援で迎えられた。最後の打席となった8回は意地の右前打で追い上げムードを作った。

 チームの中心となって127人を支えてきた砂川と与倉。昨夏・昨秋・今春と東海大相模に敗れた。「東海大相模に勝って甲子園」が合言葉。目前でその夢はかなわなかったが、127人分の汗と涙は彼らの大きな糧となるに違いない。【松熊洋介】