重圧に打ち勝った。作新学院(栃木)が県記録を更新する9連覇を達成し、15回目の甲子園切符をつかんだ。地方大会5試合で計64安打、53得点。圧倒的な打線を引っ張ったのは、日本ハム石井一成内野手(25)を兄に持つ、主将の石井巧内野手(3年)だ。この日は1安打2四死球の3出塁。持ち前の勝負強さを発揮し、全試合で本塁を踏む活躍を見せた。重圧から解放された主将は、校歌斉唱で涙を見せた。

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夏9連覇を成し遂げた石井は、重圧から少しだけ解放され、校歌斉唱で涙を流した。大会前には「プレッシャーがないと言えばウソになる」と不安もあった。それでも大会を通じ、打線を引っ張ってきた。この日も3打席で出塁。2度ホームを踏む活躍を見せた。

昨秋は準優勝、今春ベスト8と県大会で優勝することができなかった。「作新は終わった。自分が終わらせたと思った」。まだ17歳の高校生の頭には1つの解決策も見つからず「どうしていいか、わからなかった」と振り返る。

それでも何度もミーティングを重ね、チームを1つの方向に向かわせようとした。「人間はすぐ楽な方へいきますよね」と逃げることはせず、「最後に戦うのは俺たちだから」と3年生を鼓舞した。試合の敗戦や練習の厳しさから「何回も死にたいと思ったことがある」と真顔で言う。それでも「野球をやめたいと思ったことはない。死んででも野球がやりたいんです」と笑顔で言い切る。根っからの野球好きが、チームを1つにまとめ上げた。

甲子園の出場権は勝ち取ったが、喜びに浸っている暇はない。「まだ半分です。ここからまた1戦1戦、勝ち続けます。うれしいですが、このままでは甲子園で勝ち進めないと思うので、もう1度気を引き締めてやっていきます」と次なる目標を見据える。大好きな高校野球が日本で一番長くできるように。いざ、甲子園へ出陣だ。【佐藤勝亮】

▽林勇成投手(3年)「最少失点に抑えることができました。甲子園ではもう1ランクレベルアップして、野手陣を助けたいです」

▽立石翔斗捕手(3年)「ピンチを想定した練習の成果が出ました。原点に戻ったリードをすることができた。甲子園は強気で攻めて、絶対負けません」

▽中島義明内野手(3年) 自分の役割はチャンスメーク。脇役になりたいです。もっと成長して目標の全国制覇を目指します。

▽松尾翼内野手(3年)「振り返ると長かったです。悔しい思いをしてきたので、甲子園では目標の日本一を目指します」

▽大河内陸斗内野手(3年)「ここまではあくまで通過点です。甲子園で勝つために、今までやってきたことを全力で出します」

▽福田真夢外野手(3年)「勝ててよかったです。甲子園では、個人の結果よりチームが優先。その中で自分の役割を果たします」

▽八重幡丈一郎外野手(3年)「素直にうれしいです。甲子園では4番に座って、勝つ理由となるバッティングを目指します」

▽三宅悠弥投手(3年)「今日はチェンジアップをホームランにされた。このままでは甲子園で通用しない。磨いていきたい」

▽酒沢桂祐外野手(3年)「少ないチャンス、1打席で結果を出せるよう頑張りたい」

▽横山陽樹外野手(2年)「先輩たちに勝たせてもらう形になりました。甲子園では昨年の失策の借りがあるので、もう1度リベンジをして、優勝を目指します」

▽作新学院OBの日本ハム石井「今朝10時前に起きて、全部(中継で)見てました。9連覇となると、相当なプレッシャーだったと思う。甲子園で勝つためにやっていると思うので、1戦1戦全力で戦って欲しい」

▽作新学院OBで16年夏の甲子園優勝投手の西武今井「後輩たちの活躍は自分にも励みになります。栃木県の代表として精いっぱい頑張ってください。期待しています」

◆作新学院 1885年(明18)創立の私立校。生徒数3556人。野球部は1902年創部。部員数96人。甲子園は春10度、夏は15度目。第98回大会優勝。主なOBは元巨人江川卓、西武今井達也。所在地は宇都宮市一の沢1の1の41。船田元校長。