頂点が見えた。星稜(石川)が24年ぶり2度目の決勝進出を決めた。3日前に延長14回完投の熱投をしていたエース奥川恭伸投手(3年)が志願の先発で7回無失点。今大会自責0を継続して中京学院大中京(岐阜)を退けた。あす22日の決勝の相手は春のセンバツで3安打完封した履正社(大阪)。発表されたU18(18歳以下)日本代表でもエース格になる怪腕が、北陸の地に初めて大優勝旗を持ち帰る。

奥川が口元を緩めた。打者の藤田も笑う。4回2死。急激に球速表示が上がり、150キロ台を連発。スライダーをはさんでも藤田はついてくる。「顔見知りだったので、抑えたかった」。U18代表候補合宿で一緒だった仲間との戦いを楽しんでいた。8球目で一ゴロに仕留めて、試合の流れも引き寄せた。

「楽しむ」がラスト甲子園のテーマ。敗れていったライバルや友人、支えてくれた人たちのために、野球を目いっぱい楽しんだ。

こんな最高の場所を誰にも渡したくない。チームのことを第一に考える男だが、やはり気質は投手。「ここまで来たら投げたい。ほかの投手に譲りたくない気持ちがあった」。前日の昼。練習から帰ってランチをとった後、林和成監督(44)に呼ばれた。もちろん、先発するかの相談。迷っている林監督に、笑顔で「投げたいです」と告げた。「じゃあ、いこうか」。

捕手の山瀬と「直球6割」の省エネ投球を確認していた。決勝を考えて、力を抑える投球を心がけた。随所でギアを上げつつ、7回をたった87球で済ませた。抑え気味でも奪三振10。二塁も踏ませず、力の差を見せつけた。

「打線が流れを作ってくれて、投げやすかった。打たせてとろうと考えていて、その通りの投球ができた。決勝につながる投球ができたかな。あさって(22日)も、もちろん投げることになるので、頑張りたい」。セルフ先発予告が飛び出した。

奥川を中心に投手陣も野手も、今までにない力を発揮している。決勝は、春の甲子園で17奪三振完封と圧倒した履正社と戦う。

「点数は取られると思う。春とは全く違うチームになっている印象。自分たちも上積みがあると思うので、やってみないと分からない。次が最後の試合。全て出し切って、後悔のないようにやりたい」。“奥川の大会”のフィナーレは主役が締める。【柏原誠】