マグロの一本釣りで有名な本州最北端の町にある大間(青森)は「マグロ打線」形成で強豪撃破に挑む。3年生3人にとっては、町全体が盛り上がった18年夏の8強進出再現も狙っていた夢舞台が消えた。代替大会開催を信じて打線のつながりを磨き、卒業後の目標も見据えながら前を向く。

祖父がマグロ漁師をしている傳法梓音外野手(3年)は、子どものころに握っていた釣りざおをバットに持ち替えた。「おじいちゃんは70歳を超えた今も腰が痛いのに頑張って漁師を続けている。その姿を見て、自分も必死にやらないとと思えている。マグロで人を幸せにしているので尊敬しています」。自身は2年時の体験授業でイタリア料理店での仕事を経験。「将来はコックになります。ミートソースのパスタが得意です」。祖父が釣り上げたマグロを料理する前に、最後の夏は相手投手も豪快に料理してみせる。

細身な体の横浜一望外野手(3年)は、イカ漁などを営む父の稼業を継ぐ。今回の休校中も漁船に乗ってヤリイカやカレイ漁を手伝った。「波で揺れるので体幹も鍛えられる。筋トレにもなりました」。今冬も好物のタコをおかずに、夕食は白米4合を目標にして4キロ増。イカ漁で培った力強さを野球に生かす。

昨秋は、むつ地区4校でのリーグ戦や地区大会で公式戦5戦全敗だったが、今年初の練習試合で、むつ工に7-3と打ち勝って手応えも得つつある。コロナ禍とは関係なく、部活動は平日2時間、休日3時間の制限。試合を組むにも、最も近い高校まで約1時間というハンディもある。

介護福祉士などの夢も抱く工藤竜馬主将(3年)は「家族や地元で支えてくれる人への恩返しにもなるのが高校野球。時間を有効的に使うために、移動もダッシュで、マグロみたいに動きを止めないことを意識してきた」。泳ぎ続けるマグロのごとく、球場の大海原で打ち続けてみせる。【鎌田直秀】