昨夏、岩手大会を連覇した花巻東が「V3」へ弾みを付けた。甲子園経験者を含む歴代OBが集った交流戦に臨み、6-1で逆転勝ちした。強豪社会人やクラブチーム、大学で野球を続ける現役バリバリのOBを相手に、6回以降に得点を重ねて、「ガチンコ勝負」を制した。

新型コロナウイルスの影響で異例の夏を迎える3年生39人はさらに結束を高め、今週中に方針が決まる代替大会の開催を信じ、岩手では戦後初となる夏3連覇の偉業に挑む。

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4番の一振りから、現役組がOBを押し切った。1-1の同点で迎えた6回1死三塁。昨夏の甲子園を知る水谷公省内野手(3年)が、痛烈な打球を右前に運び、勝ち越し点をもたらした。「球の質や変化球のキレがすごかった。社会人の方から打てたのは自信になった」と笑顔。父は09年の甲子園にも出場した横浜隼人(神奈川)の水谷哲也監督。夏の甲子園が中止になり、父から「ピンチの時こそチャンス。目標を見失うのではなく、個人とチームの目標を考えて練習しなさい」との言葉をもらい、代替大会での完全燃焼に切り替えた。

失意に沈んだ後輩たちのため、卒業生たちが胸を貸した。佐々木洋監督(44)は「OBを集めたのは初めて。3年生がこんな状況なので、次の目標に向けて、何かしてあげたかった。学年を超えた1つの輪が、花巻東の強みだと思います。忘れられない日になりましたし、うるっときましたね」と野球部OB40人が球場に駆けつけ、伝統の結束力を再確認した。

試合前には優勝旗の継承式が行われた。今夏は岩手大会の中止に伴い、優勝旗の返還も行われない。そのため、昨年の主将だった同大・中村勇真外野手(1年)から、清川大雅主将(3年)に優勝旗が手渡された。清川主将は「代替大会で優勝する気持ちが強くなった。『県3連覇を達成してほしい』と言われて、引き締まりました」と、戦後最長の連覇記録を託された。

代替大会は開催の方向で前向きに検討されている。昨年は、同校にとって初となる2年連続夏の甲子園に出場した。水谷は「連覇を自分たちの代でつぶすわけにはいかない。甲子園はなくても、気持ちを切り替えて優勝を目指したい」と言葉に力を込めた。【佐藤究】

○…昨秋は2番手の左腕・古川端晴輝(3年)が午前に行われた青森北との練習試合で先発し、4回2安打5奪三振無失点と好投した。初回からテンポよく投げ込み、走者を3度仕留める巧みなけん制もあり、二塁も踏ませなかった。「冬場はしっかり投げ込み、春先から手応えを感じている。投球でチームの勝利に貢献したい」と意気込んだ。

○…花巻東OB組では、15年卒の左腕・細川稔樹(23=七十七銀行)が先発し、3回を2安打3奪三振と先輩の貫禄を示した。「花巻東に入って良かったと思える日だった。OBとして、社会人で活躍しないといけないなと思った」と刺激を受けた。後輩たちには「代替大会で優勝して、自分たちが甲子園に出る権利があったんだと思ってほしい」とエールを送った。