栄冠は私たちの心の中で輝く。夏季北海道高校野球大会南北北海道大会の代理抽選が9日、行われた。今春夏とコロナ禍で通常大会は中止。男子野球部員には代替大会が設けられたが、女子部員は、その大会にも出場することができない。中学時代に女子軟式で全国大会出場経験のある札幌藻岩・土田麻陽(あさひ)内野手(3年)は、自分を磨くことを目的に野球部に入部。最後の夏はスタンドから仲間に思いを届ける。

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グラウンドに立てなくてもやれることがある。土田内野手は夏季北海道大会開幕を前に、主将の中陳(なかじん)岳と約束した。「コロナの影響で、スタンドで大きな声は出せないが『困ったら麻陽を見て』と約束した。外から分かることを、うまく伝えられたら」と意気込んだ。

札幌柏中時代は女子軟式チーム札幌Breakの正捕手。中3時は主将として、全日本中学女子軟式大会に出場した。高校は女子硬式野球部がある高校にも合格したが「男子と一緒にやったら、もっとうまくなれるかなと思った」。公式戦には出られず、練習も過酷な環境を、あえて選んだ。

札幌藻岩は04年秋季全道大会で準優勝した力のあるチーム。その練習についていくのは並大抵のことではなかった。1年時、高校の外周5キロランニングで男子部員が全員ゴールした後、5分遅れでフィニッシュ。外野ポール間走では最初の組でスタートしても、ゴールはいつも最後だった。「つらくても、いつも先輩が励ましてくれたから続けられた」と、振り返った。

2年夏の大会前、1度だけ迷いが生じ、父浩平さん(45)に「辞めたい」と切り出した。試合に出たいという思いを満足に果たせないもどかしさが募っていた。高校球児だった父に「今辞めたら後悔するよ」と諭され、思いとどまった。

石山智也部長(31)は「いろいろなところに目が届き、男子が気付かないことを言える。打撃もセンスがあり、外野を越えることもある」と言う。将来は、理学療法士などを夢見ており、その勉強ができる大学への進学を考えている。野球は古巣札幌Breakの一般チームで続ける方向だ。「私の甲子園は自分を磨くこと。まだ終わりません」。この夏、3年間耐え抜いた思いを、スタンドから仲間に発信する。【永野高輔】