<高校野球茨城大会:三和9-7岩瀬>◇12日◇1回戦◇県営球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

   ◇   ◇   ◇

三和(茨城)がロッテ石崎の2年時以来13年ぶりの公式戦勝利を果たした。「おめでとう」。小児まひで障がいがありながら、3年間野球部のマネジャーを務めた荻野佑基(17)が拍手で選手を迎えた。練習中に右足を骨折。ベンチ入りはかなわなかったが、大月忍監督(45)の計らいで背番号10のユニホームを着て応援。川面亮太主将(17)は「試合中、荻野の姿が目に入り力が入った」と笑顔で握手を交わした。

小さい頃から野球が好きで大の巨人ファンだったが、高校で部活に入った。当時監督を務めていた間中大介教諭(36)から「野球はバットを振るだけじゃない。マネジャーとしてチームを支えることも野球」と入部を勧められた。選手が着ていたTシャツにも心が奪われた。背中に大きく「挑戦」の文字。「僕も挑戦するべき」と入部を決めた。

肢体に障がいがあるが、歩行はできる。打撃マシンの球入れやノックの球出し。今までは障害がいを理由に諦めることも多かったが「何ごとにも頑張る力と、根気強さが生まれました」。練習に励むチームメートを見て力が湧いた。

中学まで障がいを理由にいじめられることもあった。「何で僕だけ」と両親に気持ちをぶつけたこともある。今はチームメートの「頑張ろう」の声に心が躍る。野球を通じ生きる喜びと大切な仲間ができた。荻野は「障がいがあるからこそ得たことがたくさんある」と胸を張った。「挑戦」は忘れない。生徒会長を務め、目標は大学進学。苦しい受験勉強も、乗り越える自信はある。【保坂淑子】