全国高校野球選手権の代替となる各都道府県の独自大会が、全国各地で行われた。福岡では、福岡大大濠の宮本光志朗内野手(3年)が「投手&遊撃手」の二刀流で8回コールド勝ちに貢献した。先発で7回7安打無失点。3三振を奪った。8点リードの8回は遊撃に回り、守備で支えた。宮本は16年の熊本地震で被災。熊本豪雨の被災地への思いを胸に、白球を追った。

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福岡大大濠の“宮本武蔵”が、二刀流で知られる剣豪に負けじと、純真打線に立ち向かった。

この日の朝、八木啓伸監督(42)から昨夏新人戦以来の先発を伝えられ「意気に感じた。しっかりとゲームで守備のリズムを作ろうと思った」と起用に応える覚悟を決めた。最速140キロの直球を軸に、カウントを取る目的と決め球で使い分ける得意の2種類のチェンジアップ、スライダー、フォーク、カーブなど多彩な変化球を披露。相手を翻弄(ほんろう)した。

「5回の目標だったが、思った以上に踏ん張った」と八木監督。7安打を浴びたが、要所を締めて無失点。気迫を前面に出し、力投した。5回には無死満塁のピンチを背負った。だがチェンジアップで後続を3人で仕留め、流れを渡さなかった。8回は、本職の遊撃で勝利を見届けた。

熊本市出身の宮本は、16年4月の熊本地震で被災した。自宅マンションが半壊して水もガスも止まってしまい、一時期車中泊を強いられた。それだけに、7月の豪雨被害は人ごとではなかった。「今回、悲しい思いをしました」と心を痛めた。4年前は多くの人に支えてもらった。当時を思い起こし「野球に集中することで、感謝の気持ちを伝えたかった」と燃えていた。

宮本の奮闘で、チームは26日の難敵・東福岡戦へエース山下を温存した。宮本は「優勝目指して楽しんで終わりたい」。最後まで頂点を目指し、自分の役割を果たす。【菊川光一】

◆宮本光志朗(みやもと・こうしろう)2002年(平14)7月27日、熊本市生まれ。野球は小3から北熊本ボーイズで始め、中学まで同チームでプレー。福岡大大濠では1年秋からベンチ入りし、2年春からレギュラー。目標はツインズ前田健太。179センチ、78キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。