磐城(福島)の前監督・木村保氏(50=県高野連副理事長)が、悲願の甲子園でノッカーを務めた。第2試合開始前の約7分間、教え子たちに熱いノックを打ち続けた。ノックを終えた木村氏は、目を潤ませていた。「人生で一番、特別な濃密な7分間を過ごして、初めての感覚でした。時が止まっているような。子どもたちが最高の舞台で最高の準備を出来るようにと思っていました」。長くて短い7分間を心から味わった。

木村氏は磐城の監督として、今春のセンバツに21世紀枠で46年ぶりの甲子園に同校を導いた。しかしコロナ禍で3月11日に大会中止が決定。甲子園の土を踏むことなく4月から福島商に移動し、県高野連の業務を担当していた。甲子園交流試合開催にあたり、福島商と磐城の間で前向きに検討が重ねられ、ノッカーでの“出場”という悲願が実現した。

試合後の囲み取材。「1年夏に初戦敗退して、敗退してからの日が…」と、これまでの道のりを思い出し、声をつまらせた。「本当にいろいろなことがありすぎて。野球の神様がいるんだな、とこの年になって本当に感じました。感極まりました」。試合は国士舘(東京)に善戦するも惜敗。それでも磐城のユニホームを着て躍動した教え子たちに、感無量だった。