特別な夏が終わった。白樺学園(北海道)は交流試合最終日最後の試合で、山梨学院(山梨)に3-8で敗れた。

1回裏に1点を先制。1-2の5回、先頭の1番川波瑛平左翼手(3年)が中越えソロを放ち追いつくも、その後の無死一、三塁のチャンスで無得点。6回に3点、7回に1点、8回に2点を失い畳みかけられた。帯広農とのダブル勝利はならなかったが、9回に1点を返すなど、最後まであきらめなかった。

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敗れはしたが、最後まで全力を出し切った。先制して逆転され、追いついて突き放されて。業天主将は「テレビで見る甲子園とは違った。実際にこのすごい舞台で野球ができて、楽しかった」。コロナ禍で一端は消えかけた聖地での戦い。川波は「負けたのは悔しいけど一生の宝物になりました」と笑顔で振り返った。

1-2の5回、先頭で切り込み隊長の川波が、バックスクリーン左へ同点ソロを放った。昨秋の明治神宮大会で、チームは4強進出も、自身は2戦8打数無安打に終わっていた。「こういう場所で打つなんて、なかなかないこと。本当にうれしい」。雪辱をかけた全国舞台での初安打が、甲子園で放つ道勢65本目のアーチとなった。

OBの兄俊也さん(23)は15年夏の甲子園メンバー。同じ1番打者も5打数無安打に終わっていた。その兄からもらったスパイクを履いて2安打1打点。スタンドで見守った兄に向け「『しっかり打てたよ』と伝えたい」と笑顔で話した。

3安打の5番二ツ森は試合前、両親に「ここまで応援してくれてありがとう。恩返しのプレーをします」とLINE(ライン)を送ってから試合に臨んだ。「今までこんなことをしたことがない。両親の前で打てて良かった」と照れくさそうに話した。

宿舎を出発前、前日勝利した同じ宿舎の帯広農を見送った。戸出直樹監督(44)は「次はお前たちの番だ」とカツ。6点ビハインドの9回2死から川波が出塁し、1点を返した。最後までしっかり爪痕を残した。

新型コロナウイルス感染予防のため、約2週間のオフを挟み新チームは9月1日に始動する。8回1死から登板し1回1/3無安打無失点と好投した2年生の葛西は、投げた17球すべて変化球だった。「夢に見ていた舞台で投げられたが、もっと力をつけて今度は、甲子園で直球で三振を取れるようになりたい」。2泊3日と短かったが、濃厚な思い出を胸いっぱい詰め込んで、北海道に持ち帰る。【永野高輔】

▽6回から2番手で登板した岩田(全国初登板で3安打3失点)「片山には『思い切っていけ、逃げるな』と声をかけられてマウンドに上がった。甘い変化球は確実に外野に持って行かれてしまった。野球は続けるので、この失敗を今後に生かしたい」

▽5回無死一、三塁でタッチアップしかけるも途中で戻り三塁でアウトになった細谷「(夕日で)ライトが取ったようにように見えたんですけど、打ってちょっといった時点で打球が見えなくなった。(離塁が)『早い』との声が聞こえて戻った。点がほしかったので、あせっていた」

▽先発で唯一の2年生だった6番宍倉「いつも3年生の後についてばかりだった。これからは自分が引っ張っていかないと。(3打数無安打に)なぜか自分のスイングができなかった。こういう大舞台でもいつも通りのプレーができるように練習を積んでいきたい」