東邦(愛知)と県岐阜商の3年生による引退試合が27日、パロマ瑞穂野球場で行われた。東邦で昨春のセンバツVを経験し、チームをけん引してきた吉納翼外野手(3年)は「苦しいことばかりだったけど、最終的にみんなが笑って終われて良かった」と充実の表情。ナイター照明のもと、すがすがしく夏を終えた。

全国Vから1年後。コロナの影響で休校、部活動の停止と、なす術なく春を過ごした。優勝を目指すと決めた夏の愛知独自大会。順調に勝ち進んだが、またもコロナ禍に道を塞がれた。

7月26日、愛知独自大会4回戦当日の朝。球場に12時集合のはずだった。だが、選手たちの元へ「10時半にグラウンド集合」と変更の連絡が回った。学内でコロナ感染者が出たため、辞退が決定。吉納も「その日は泣き崩れました」。突然の“引退決定”に、山田祐輔監督(30)は「このまま終わりにはしない。引退試合を考える」と約束した。同日中に、交流のある県岐阜商の鍛治舎巧監督(69)が引退試合を提案。この日が、選手たちのモチベーションの全てだった。

試合2-11で敗れた。休校の影響で全体練習はほとんどできなかった。3年生は、秋季大会が始まった下級生にグラウンドを譲った。だが毎日、多くの3年生が後輩のために、水まきなど雑用をこなした。山田監督は「これから先、苦しいことを乗り越えた時に他の人より成長があると信じています」とうなずいた。4月から監督に就任し、過ごした時間は短かった。だが、教え子たちの頑張りは誇らしかった。【望月千草】

○…東邦OBで元中日の山田喜久夫氏(49)はネット裏から、次男聖将(3年)の引退試合を見守った。先週、練習から帰ってきた聖将が胸と背中の痛みを訴えた。肺に穴があく「気胸」の症状が左の肺に起きていた。全力で走ることができず、当初はこの日の出場も見通せなかったが、医師の承諾をもらい、緊急時に備えて救急車を配備された。8回裏に息子が代打で姿を現すと、アナウンスで名前が呼ばれる前に「あっ」と声をあげ、スマートフォンで息子の最後の打席を撮影した。初球から全力でたくましくフルスイングし、2球目で二飛に倒れた。「お疲れさんの一言。2年半の区切りがついたと思う」と優しくほほ笑んだ。