今秋ドラフト1位候補の最速153キロ右腕、福岡大大濠・山下舜平大(しゅんぺいた)投手が30日、甲子園で行われた「プロ志望高校生合同練習会」のシート打撃で150キロの直球を披露した。打者5人に1安打、1四球、3奪三振。安打を許したのは、スタッフとして運営を手伝った大学生だけ。参加投手ただ1人の150キロで、12球団のスカウト96人に抜群の能力を改めてアピールした。東日本では9月5、6日に東京ドームで行われる。

直球とカーブだけで抑え込んだ。初めて立つ甲子園のマウンドに「感動しました」と山下。1ストライク1ボールから始まるシート打撃で、先頭の神村学園(鹿児島)の桑原秀侍投手への3球目の高め直球が、この日最速150キロを計測した。18球中11球が直球ですべて145キロ超え。3つのうち2つは120キロ台のカーブで三振を奪い、緩急で翻弄(ほんろう)した。

5人目の打者は大学生。米子東(鳥取)の岡本大翔内野手が左手首痛で打席を回避し、スタッフの同大・杉森圭輔捕手(2年=敦賀気比)が入った。山下は、大学生の参戦は知らず「出てきてびっくりしました。やっぱり3ボール1ストライクになって、真っすぐに張られていて、やっぱり、まだまだだなと思いました」。148キロの内角直球をはじき返され、反省した。

進路は高卒でのプロ1本。今夏の独自大会で評価を急上昇させたが「アピールする場があればアピールするもんだと思っていました」とドラフト1位候補という周囲の声を知りながら、合同練習会に参加した。ヤクルト小川GMは「雰囲気も申し分ないし、素材的にも申し分ないと思う」と話し、ソフトバンク永井編成育成本部長兼スカウト育成部長は「球に勢いがあるのでマウンドが近く感じられる。圧を感じる。1位指名をされるくらいの能力はある」と高評価した。

八木啓伸監督(42)が大きく育てようと、カーブ以外の変化球は封印。山下は「他の球種を投げたら幅は広がる。スピードボールを投げる投手に憧れているので、もっと伸ばしていきたい」と話す。ドラフト会議まで成長を期待させる2日間だった。【石橋隆雄】

<各球団スカウトのコメント>

▽巨人水野巡回投手コーチ (山下は)抜群。スピードも力もある。昨日の遠投もすばらしい。いい投手になるんじゃないか。

▽DeNA吉田チーム統括本部顧問兼球団代表補佐 いい球を放っていた。(直球とカーブだけは)今の選手にしては珍しい。

▽阪神畑山統括スカウト 昨日のキャッチボールや遠投だけを見ても、上位候補、1位候補に値するぐらいの形を見せてくれた。

▽中日中田アマスカウトアドバイザー 物が違う。持っている球の角度、ボール自体が力がある。素材は(1位の)素質はあると思う。

▽広島鞘師スカウト (山下は)球団としても1位候補に挙げてますから。素材の大きさも感じるし、現時点のボールもすごいですけど、将来性も大きいなという感じ。

▽楽天後関スカウト部長 「アッ」と目を引く選手もいた。(山下は)思った通りのパフォーマンス。粗削りな部分はあるが、150キロの球は非常に魅力。(コロナ禍で)回数が見られない点で不安材料はあるが、最終的には完璧にしてドラフトに臨むつもり。

▽日本ハム大淵スカウト部長 改めてスケール感の差が、よく分かりました。球団の複数が(山下を)見られたのは大きいと思います。

◆山下舜平大(やました・しゅんぺいた)2002年(平14)7月16日、福岡市生まれ。野多目小3年から筑紫丘ファイターズで野球を始める。三宅中野球部3年時に福岡県選抜で全国大会準優勝。福岡大大濠では2年春からエース。カーブは120キロ台と100キロ台と2種類を使い分ける。遠投110メートル。50メートル走6秒7。188センチ、93キロ。右投げ右打ち。血液型B。名前の由来は20世紀前半に活躍した経済学者ヨーゼフ・シュンぺーターから。