初の聖地へ大きく前進した。日本高野連は11日、第93回選抜高校野球大会(来年3月19日から13日間・甲子園)の「21世紀枠」候補9校を発表し、東北からは八戸西(青森)が初選出された。今秋は県準優勝で東北大会初出場を果たし、同大会でも1勝を挙げて8強入り。創立47年目で春夏通じて初甲子園が見えてきた。同枠3校を含む代表32校は、来年1月29日の選考委員会で決定。同校が選出されれば青森勢初の21世紀枠となり、公立校では85年の弘前工以来、36年ぶりのセンバツとなる。

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寒空の下、八戸西ナインが笑顔を見せた。東北地区6校から1校に絞られた21世紀枠候補。選手には午後4時過ぎ、同校グラウンドで小川貴史監督(37=写真は東北題字)から伝えられた。県勢では08年の五所川原農林以来、13年ぶり2度目の「ファイナリスト」。宮崎一綺(かつき)主将(2年)は「ずっとドキドキしていた。素直にうれしい気持ち」。白い吐息から、安堵(あんど)の言葉を口にした。

今秋は188センチのエース右腕・福島蓮(2年)を擁し、県準優勝から初の東北大会出場。初戦は福島商に10-3で7回コールド勝ちし、準々決勝で花巻東(岩手)に1-2で惜敗した。福島は最速143キロ直球と落差の大きいフォークを武器に、強豪相手に完投。今秋は地区予選から全9試合先発とフル回転した。「秋は自信になった。冬は下半身を鍛えて、球速アップと制球力を磨いていく」と一冬を越え、さらにスケールアップする。

「鬼」と化した指揮官の教えが実った。小川監督は今年1月、野球部の書き初めで、躍動感のある筆で「鬼」と記した。「流行(鬼滅の刃)とは違いますよ」と苦笑いも、「『鬼監督になるぞ、鬼練習するぞ』と」。現チームは夏休みに猛特訓。コロナ禍の影響で遠征や合宿が自粛となり、同校グラウンドで朝6時から夜7時まで練習に「全集中」。秋の好成績につなげた。

手厚いサポートも意気に感じる。同監督は八戸高等支援学校の教諭として勤務しており、同学校の生徒たちが傷んだボールをテープで巻き、これまで3000球以上を修復。選手はトス打撃などで、感謝の気持ちを持ってバットを振り続けている。宮崎主将は「打撃力向上につながっている。打ちまくって、結果で応えたい」と恩返しを誓う。夏は2度の青森大会準V止まり。宮崎主将は「憧れの甲子園に立てるかもしれない。しっかり練習していきたい」。万全の備えで吉報を待つ。【佐藤究】