第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)に初出場する柴田(宮城)は昨秋、守備からリズムを作り、攻撃につなげるスタイルで、県3位から東北大会準優勝の快進撃を演じた。同校のある柴田町にまたがる白石川沿いの「一目千本桜」は、「さくら名所100選」に入る景勝地。連載「柴田七本桜の陣」と題し、チームのカギを握る7人を紹介する。

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柴田の長山聖(ひじり)マネジャー(2年)がチームを陰で支える。小、中学校とスポーツ経験はなし。合唱団、吹奏楽部と音楽一筋だったが、高校野球のマネジャーは幼少期からの夢だった。きっかけは幼稚園年長で、季節は夏。宮城・石巻市出身で自宅からほど近い親戚宅に遊びに行くと、毎日のように甲子園中継がテレビに流れていた。「親戚が野球好き。高校野球の魅力にひかれてしまった。甲子園にはまた違う“熱さ”があるんだ」と感銘した。

2学年上の先輩マネジャーから仕事を教わり、1年秋から独り立ち。入部当初はスコアブックもままならなかったが、今では正確に記載できるようになった。試合中には「5番セカンド、(前の打席打球が)ライト行ってま~す」。ベンチから選手に伝達する声が、球場全体に響く。小5から地元の合唱団に所属。5年間メゾソプラノを担当していたため、発声には自信を持っている。「外野手までしっかり伝わるように、頑張りたい」と意気込む。

米洗いから後片付けまで補食の準備も1人で行う。今冬は20合用の炊飯器2台をフル稼働。部員32人分の計40合を炊き、こぶし3つ分ほどのおにぎりを作る。ふりかけを使用し、味にも工夫を凝らす。食べ残しは許さず、炊飯器を担ぎながら部室まで押し掛けることもしばしばだ。選手の体作りをサポートしている。

長山マネジャーは言う。「甲子園ではみんなの個性がチームの和になって、プレーに出してほしいな~。試合に勝った時、ベンチやグラウンドで喜ぶ選手の姿を見るのが一番好き。マネジャーやって良かったなと思える瞬間なので」。

桜の季節とともに、甲子園の球春も開幕する。今年、阪神電車沿線の開花予想は3月23日前後。桜舞う中の聖地初勝利を信じ、紅一点も笑みがはじける時を待っている。【佐藤究】(おわり)

◆長山聖(ながやま・ひじり)2003年(平15)7月4日生まれ、石巻市出身。大河原中では吹奏楽部に所属し担当はトランペット。身長166センチ。将来の夢は病棟保育士かブライダルプランナー。家族は両親と弟2人、妹。