<高校野球埼玉大会:花咲徳栄8-1朝霞>◇13日◇2回戦◇越谷市民球場

6年前の夏の埼玉大会。大宮公園野球場で始球式をした野球少年が、高校球児として帰ってきた。朝霞(埼玉)のエース山口達也投手(3年)は「始球式を経験したので、それからの野球人生で緊張することがなくなった。自信になりました」と明かした。

観客の視線を一身に集めて投じたボールは、今も自宅に飾ってある。今大会前には、当時の映像を見返して自信を深め、この日の花咲徳栄戦に臨んでいた。あの日と同じ大宮公園野球場で投げることはできなかったが、全国レベルの強力打線を3回まで無失点。変化球を多投してスライダー、フォークをコースに決め、カーブを効果的に使った。初回から全力投球。「力んでもしょうがない。思い切り腕を振ろうと思った」。鈴木直哉監督(43)が「持っている力以上のものが出た。あんなに決まる変化球も、速い球も見たことがなかった」と驚くほどの好投だった。

あの大舞台での経験があるから、優勝候補と相対しても緊張はしなかった。結果的に5回4失点で敗退。それでも「楽しかったです」。笑顔で、高校野球に別れを告げた。【保坂恭子】