東明館が春夏通じて初の甲子園出場を決めた。2年生エース右腕、今村珀孔(はく)投手-プロ注目で主将の加藤晴空(そら)捕手(3年)のバッテリーを中心に自慢の堅守で2-0で佐賀北に競り勝った。

「キングダム・ナイン」が07年夏に全国制覇した佐賀北との激闘を制した。優勝の瞬間、今村は右手で会心のガッツポーズだ。鮮やかな青地に縦じまユニホームの選手たちが“渦潮”のごとくマウンドに集まり歓喜。今村が「優勝の瞬間は覚えていない」という大興奮の初優勝だった。

加藤主将は「(甲子園を)目指せなかった昨年の3年生の分まで、自分たちが『行きたい場所』ではなく『行かないといけない場所』と言ってやってきた」と、思いを代弁。コロナ禍、全国大会が中止となった昨夏の無念を晴らした。

今夏は、堅守から得点チャンスを確実に生かす勝負強さで進撃。決勝も“堅守速攻”は健在だった。今村は最速は130キロ台前半も丁寧にコーナーを突く制球が抜群。特に春先に習得した左打者への外角カットボールが有効で、7安打されながら高校初完封。

4回、いい流れを味方に先制。1死三塁で5番・窪山祥悟内野手(3年)が中前適時打。さらに、2死満塁で今村が左前適時打で加点。そのリードを守り切った。これで昨秋から県大会は3連覇だ。

昨秋の九州大会準々決勝で、センバツに出場した宮崎商に敗れた。加藤主将は「秋に甲子園に行けず悔しい思いをし、夏は全員で甲子園に行く思いだった」。以降、「どこよりきつい練習をやった自信が勝ちにつながった」という猛練習で、パワーアップした成果を出した

漫画家原泰久氏の母校でもあり、今村も人気漫画「キングダム」はお気に入りで。自宅にコミック20巻をそろえる。「総大将同士の1対1の決闘がすごい」と言い、自身も打者相手に決死の覚悟で対峙(たいじ)した。「甲子園で1勝することを目標にしてきた。勝ちにこだわって、やっていきたい」。今度は聖地で暴れてみせる。【菊川光一】

◆キングダム 古代中国の春秋戦国時代を舞台に、戦災孤児の信が、天下統一を目指す若き日の秦の始皇帝とともに、大将軍になる夢に向かい突き進む姿などを描く漫画。19年には実写映画化された。

○…OBの漫画家・原泰久氏も、母校の甲子園初出場を喜んだ。自身のツイッターで「母校東明館が甲子園初出場決めました!! おめでとうー!!!」と涙の絵文字入りで祝福した。