道勢夏6年ぶりの勝利を狙う。第104回全国高校野球選手権大会の南北海道代表・札幌大谷が9日、第3試合で二松学舎大付(東東京)と対戦する。最速148キロの左腕エース森谷大誠(3年)は、2年秋から米エンゼルス大谷翔平が高校時代に実践した「原田メソッド」を本格的に始め成長。鍛え上げた精神力と、あこがれの日本ハム伊藤大海ばりの“遅球”もおりまぜ、夏初陣1勝を呼び込む。

臨戦態勢は整った。森谷は8日、兵庫・伊丹市内のグラウンドで約20球、投球練習。聖地での初戦に向け「明日の試合が楽しみ。ワクワクしている。特に1、3番に好打者がいる印象。その前に走者をためないように」と思い描いた。

磨き上げたメンタルを聖地で生かす。昨秋の地区代表決定戦で敗れて以降、大谷翔平が花巻東時代に実践していた「原田メソッド」を本格的に開始。資格を持つ信田爽人投手(3年)の母牧さんに習い、目標を「甲子園で優勝」に設定。マンダラチャートと呼ばれる表の中心に記すと、周囲には「150キロに乗せる」「変化球の精度を上げる」など、必要な要素をたくさん挙げ、自宅の玄関に掲げ毎日、目に入るようにしてきた。

同メソッドの一環で毎日日誌を書き、食事の写真も全部撮影して牧さんに送り、添削を受けるという習慣を、大会中も休まずに続けた。「自分を客観的に見られるようになった。特に、楽しもうと思ってやっていると、いい結果につながることが分かった」。導き出した勝利へのカギは「エンジョイピッチング」だ。

甲子園切符をつかんだ後も反省は忘れていない。知内との決勝は9回2失点完投も、8四球と制球に課題があった。「体が突っ込んでいた。下半身の使い方を見直して、1本足でしっかりためをつくれるようになった」。この日も、しっかり右足に乗る感覚を確かめてから投球練習に臨み「フォームの確認ができた」と手応えを口にした。

あこがれは日本ハム伊藤大海。「緊迫した場面でスローカーブを投げる大胆さがすごい」。80キロ台の伊藤の超スローカーブほどではないが、自身も100キロ前後の“遅球”を駆使することもある。緩急自在の投球で、16年準決勝・北海-秀岳館(熊本)以来、2180日ぶりの道勢夏1勝をたぐり寄せる。【永野高輔】

■船尾監督、いとこトシのエール受け初勝利を狙う

札幌大谷の船尾隆広監督(51)が18年明治神宮大会、19年センバツに続く3大会目の初陣1勝を狙う。南大会優勝時には、18年秋季全道優勝時同様、いとこのお笑いコンビ、タカアンドトシのトシ(46)から高校に祝福の花が届いた。お礼のメッセージを送ると「頑張ってね」と激励メールが返ってきたという。7日の練習では監督自ら打撃投手を務め約60球投げるなど精力的。「選手の体の状態も良さそう。森谷も疲れが抜け腕が振れている。うまくいっている」と話した。