センバツ出場の横浜(神奈川1位)が22年ぶり7度目の優勝を決めた。長短打14安打にホームスチールも決めるなど、機動力野球で13得点。9回には最速154キロ右腕、織田翔希投手(3年)が150キロ超えを連発する好救援で圧倒した。センバツ初戦敗退の悔しさを糧に、チームが掲げる「負けない野球」を体現し春の関東王者に輝いた。
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最高の瞬間をかみしめた。織田は最後の打者を130キロのカットボールで捕邪飛に打ち取ると、カバリングに入っていたホームベース付近で両手を突き上げた。「高校に入って初めて優勝投手になりました。これほど幸せな時間はないと思いました」。マウンドで待つチームメートの輪に笑顔で飛び込んだ。
1イニングだったが、今の織田のすごさを見せつけるには十分だった。9回、10点の大量リードを背にマウンドに上がり、初球153キロの真っすぐを投げ込むと球場がざわめいた。力のこもった1球に、気持ちも乗った。2人目の打者への初球、自己最速タイの154キロを記録。1回を投げ1安打無失点。全13球中、9球が150キロ超えの直球で圧倒した。
久しぶりに笑顔が戻った。春の県大会は「直球は外角」、関東大会準々決勝の先発時は「直球は内角」と、村田浩明監督(39)の指示で制限付きの登板を続け、力を磨いてきた。同監督は「今日はスピードガンにこだわっていいよ。重しを取ろうよ」と、マウンドに送り出した。織田は「エースとしてチームを勝たせる投球を」と、昨秋から常に考えながら投球。いつの間にか小さくなっていた自分を解放し、伸び伸びと投げた。「本当に楽しかった。1球1球、最大限で投げられて、楽しすぎました!(笑い)」。大きな声援を背に、高い集中力が織田を最高潮に押し上げた。村田監督も「(球が)うなっていましたね。楽しんで投げていましたもん。やっと笑顔が戻ってきた。高校生なんだなーって思いましたね」。指揮官の顔にも笑みが浮かんだ。
チームが掲げる「負けない野球」が形になった。前日のミーティングで村田監督は「去年の先輩はベスト4で負けた。私も(監督として)関東大会優勝したことがない。新たな歴史に刻むよ」と選手に話しをした。小野舜友主将(3年)は「全力疾走、投打のリズム。今までやってきた横浜の野球をもう1度、原点に戻って徹底することが“負けない野球”」と、胸を張る。勝利のために、今何が必要かをそれぞれが考え、最後の瞬間まで全力を出し切る。織田の力のこもった1イニングには、今の横浜の“執念”が込められている。最高の夏を迎える準備ができた。【保坂淑子】
○…横浜は意表を突くホームスチールで点差を広げた。1点リードで迎えた4回。4点を挙げ、なおも2死三塁。カウント1-1で三塁走者の千島大翼外野手(3年)が本塁へスタート。捕手が投球を後ろにそらす間に本塁を陥れた。千島は「行けるなら行ってもいいというサイン。投球動作に入った瞬間にスタートを切りました」。村田監督は「決勝戦での1点は重い。何点あってもいい」と、最後まで手を抜かず、機動力野球が勝利を引き寄せた。

