福岡131チームの頂点に立ったのは、県内屈指の公立進学校で知られる東筑だった。次々と強豪私学をなぎ倒し、最後は希望が丘に1点差勝利。破竹の勢いで勝ち上がり、9年ぶり7度目の夏切符をつかんだ。5番河野咲郎(さくろう)内野手(2年)が4回無死満塁から、先制&決勝の3点適時三塁打。下級生ながらクリーンアップに座る男が大一番で勝負強さを発揮し、値千金の一打を決めた。選手権大会の組み合わせ抽選会は8月1日にオンラインで行われ、同5日に甲子園で開幕する。
◇ ◇ ◇
東筑ナインが土煙を上げながら、勢いよくマウンドへ駆け込んでいった。人さし指を突き上げ、思い思いに跳びはね、体をぶつけ合った。9年ぶりの夏頂点に声にならない声で叫び、誰もがうれし涙を流していた。歓喜の輪がとかれても、興奮は収まらない。正捕手で平山護主将(3年)の顔は紅潮していた。
「本当に…。もう実感が湧かないです。うれしいのひと言に尽きます」
勝てば全国も、負ければ高校野球が終わる大一番。決めたのは5番河野のバットだった。「自分で決めようと思っていた」。0-0で迎えた4回無死満塁。絶好機に燃えないわけがなかった。カウント1-2からの4球目、甘く入ってきた真ん中直球をフルスイングした。「会心でした」。打球は右翼手の頭上を越え、走者一掃の先制3点三塁打となった。歴代OB、全校応援で埋まった一塁側スタンドも総立ち。殊勲のヒーローは三塁ベース上で右こぶしを振り上げた。
「先輩を甲子園に連れていくためにも、絶対に打ちたかった」
就任1年目、母校で夏は初めて采配をふるった山下聖士監督(45)にとっても万感の思いだった。試合後、目を真っ赤にし「本当に勝たせてあげたい思いで。うれしい思いもあるんですけど、安堵(あんど)の方が大きいですかね」。県内屈指の進学校。文武両道をモットーに「公立の雄」で知られる。周囲からの期待も大きく「プレッシャーはめちゃくちゃありました」。重圧から解放され、指揮官の表情にも少し達成感がにじみ出た。
ゴールではない。むしろスタートラインでもある。「なかなか全国では勝てていない」と山下監督。春夏合わせ出場した直近3大会連続で初戦敗退中。甲子園1勝はエース石田泰隆を擁した96年以来、遠ざかっている。出場131チームの激戦区を制した自信も胸に、30年ぶりの聖地1勝に挑む。【佐藤究】

