高校野球の地方大会が28日に終了した。日刊スポーツでは、今春入社した4人の新人記者が取材で奮闘。それぞれが体感した「1年目の夏」を振り返る。
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9回、あと一つ。高岡第一(富山)の前田侑大(ゆうと)投手(3年)がノーヒットノーランまで残り1アウトに迫ると、球場の空気は一変した。緊張していたのはマウンド上の前田だけではない。ファインダーをのぞく私も「達成すればこの記事は大きくなるかもしれない」と胸の鼓動が速くなっていた。歓喜の瞬間を逃すまいと、シャッターを切る指先にも力が入る。そして最後の打者を打ち取ると、アマ担当キャップから「1面でいく」と連絡が届いた。
記者になって初めての出張だった。向かった先は富山県。最速156キロを誇るプロ注目左腕の前田を擁する高岡第一の3回戦だった。この日の目標は、前田の魅力が伝わる写真を1枚でも多く撮ること。バックネット裏だけでなく、一塁側、三塁側へと動き回り、表情や迫力が伝わる瞬間を求めてシャッターを切り続けた。
試合前には両親に話を聞き、本人には5分という限られた取材時間の中で質問した。試合後は中学時代の監督に取材をし、そのまま新幹線へ飛び乗る。車内で試合の情景や前田の表情を思い浮かべながら記事を書き進めた。文章は何度でも書き直せる。でもその場で話を聞けるのは現場にいる自分しかいない。その責任の重さを改めて実感した。
翌日、1面には自分が書いた記事と、自分で撮影した写真が掲載された。入社前から日刊スポーツの1面に名前が載ることは憧れだったが、その夢は思っていたよりも早くかなった。記事と写真、その両方に名前が記された1面は、忘れられない1枚になった。
さらに、心に残る出来事があった。「1面になったよ」。毎週日曜日に日刊スポーツが届く祖母へ連絡すると、すぐに電話がかかってきた。「頑張っている成果を見られて、おばあちゃん本当にうれしいよ」。その一言で、自分が書いた記事は誰かの心に届いたことを実感した。
この夏、初めての出張で、初めて1面を書き、初めて自分の写真が1面に掲載された。その経験を通して、現場で集めた言葉や情景が記事となり、読者に伝わる喜びを知った。これからも、一人でも多くの人に感動を届けられる記者を目指したい。【栗林真菜】
◆栗林真菜(くりばやし・まな)2003年(平15)8月14日生まれ、京都府木津川市出身。父の仕事の都合でアメリカのシアトルで生まれ、2歳の時に来日した。幼い頃にやっていた習い事はピアノとバレエ。南海ホークスが好きな父の影響で、好きな球団はソフトバンク。家族は父、母、妹。

