<高校野球福島大会:双葉14-0好間>◇15日◇2回戦

 福島第1原発事故の影響で部員の半数以上が転校した双葉が、逆境をはね返す勝利を挙げた。福島大会初戦の2回戦に登場。好間に圧勝した。部員35人中20人が転校を強いられ、残った15人も間借り先の県内3校に離散。週末しか集まれない中、全校応援の前で初戦突破し、田中巨人(なおと)監督(38)は「野球に飢えていた。本当にうれしい」と感無量の様子だった。

 原発事故で絆を引き裂かれても「1勝」にたどり着いた。5月中旬。練習試合で岩田智久主将(3年)はヤジを受けた。相手校には双葉からの転校生が多数いた。「聞き覚えのある声で悲しかった」(岩田)。ただ、彼らが新天地に溶け込むため必死なのも分かる。試練と思い、乗り越えた。

 一方で刺激も受けた。部員や監督の元には、大和南(神奈川)に転校した、前エースの久保田将光(3年)たちから激励が届く。久保田は前日14日、神奈川大会2回戦で名門の横浜商に1-2で惜敗したが、延長11回を完投。その久保田に代わり、背番号1をつけた田仲元貴(3年)が、この日は4回無失点。打っては1回に左越え3ランを放ち「久保田から『俺らの分まで頑張れよ』とメールが来た。転校した仲間に、いい報告ができる」と喜んだ。

 双葉は参加87校で原発に最も近い3・5キロにある。警戒区域で立ち入り禁止だが、6月1日に1度だけ、防護服に身を包んだ職員が校舎に入った。制限がある中、校旗だけ持ち出せた。夏3度の甲子園出場を誇る古豪だ。その伝統を見守ってきた校旗がたなびく下で、双葉ナインが新たなページを歴史に加えた。【木下淳】