<高校野球千葉大会:東京学館浦安3-2専大松戸>◇17日◇4回戦

 小さな巨人が金星の立役者になった。東京学館浦安の168センチ右腕、巣山一歩(かずゆき)投手(3年)が優勝候補の専大松戸打線を手玉に取った。サイドスローの技巧派は、カーブなど5種類の変化球を巧みに操りプロ注目右腕、上沢直之投手(3年)との投げ合いを制した。打線の援護をしっかり守り抜き、勝利へ導いた。

 2年の春にサイドスローに転向した。最速134キロも、身長が低いぶん横から角度をつけ、低めにボールを集める投球を目指した。「壁当て」で制球力を磨いた。ブルペンでの投球練習を終えると、1人で左翼付近にある壁に向かう。壁には腰くらいの高さに線がひかれており、その線の下を目がけて、毎日50球程度の投げ込みを行った。

 東日本大震災の影響で“女房役”の壁は崩れ、グラウンドの大半は液状化現象を起こした。今では壁やグラウンドは修復されているが、中学校のグラウンドを借りて練習したこともあった。しかし練習場が変わっても日課を欠かさなかった。時にはネットに目印となる枝などを引っ掛け、1人で黙々と投げ続けた。

 「なんだか今日は打たれる気がしなかったです」と6安打完投を振り返った。「今から学校に戻ってまた壁投げしますよ」。涼しい顔で話す姿は、自信に満ちあふれていた。