<高校野球北北海道大会:女満別8-2岩見沢東>◇20日◇準々決勝

 人口9000人の小さな町にある全校生徒136人の小さな学校が、甲子園にまた1歩近づいた。女満別が岩見沢東を下し、初の4強に進出。大塚主将の好リリーフが、チームを未知の領域へ導いた。

 1点リードの7回表、地区予選から1人で投げてきたエース二階堂誠が守備の乱れもあり、同点を許し降板。ここでマウンドに上がったのは、この夏初登板の二塁手・大塚だった。「主将として、投手として、しっかりプレーすることだけを考えました」。直前に野選と失策を犯していた。責任を感じながらも、開き直って目の前の打者に立ち向かった。

 緊急登板にも動じない精神力でチームを鼓舞し続けた。「投球練習は週に1回するかどうか…」。それでも、マウンドに上がれば不安を見せるわけにはいかない。無死一、二塁で三塁方向のゴロを捕球すると自ら三塁ベースに足から滑り込んで、1死をもぎ取った。バックを守る野手に必死な姿を見せ続け、逆転は許さなかった。鈴木收監督(43)は「これまでもこういう場面で投げさせてきた」と全幅の信頼を置いていた。

 ピンチを乗り切ると、ビッグイニングが待っていた。7回裏1死からの5連打で5点を奪った。大塚も4点目を奪う二塁打を放ち、打撃でも仕事を果たした。1年前の夏、腰痛を発症。もともとは右打ちだったが、左右のバランスを取るため、右打ちから両打ちに挑戦した。素振り1日1500回を目標に、毎日続け、マスターした。「必死に練習している姿を見せれば、付いてきてくれると思いました」。今では、左右遜色ない打力を身につけた。

 明日22日は初の決勝進出をかけて、白樺学園と対決する。「テレビ中継があるので、より多くの人たちに自分たちの野球を見てもらえる。応援してくれている人に恩返しできるようにがんばりたい」。町民の期待を胸にグラウンドに立つ。【木下大輔】