<高校野球岩手大会:花巻東6-2大船渡>◇21日◇準々決勝

 岩手大会の準々決勝で大船渡が敗れ、東日本大震災の被害が激しい沿岸部の学校がすべて姿を消した。大船渡の主将、氏家規元捕手(3年)は「支援のおかげで野球を諦めることなく、大会に参加できた。幸せです」。仲間への感謝の言葉を口にした。

 チームの仲間へ-。エース上野史人(3年)とは、自宅も近い親友で、小学4年からバッテリーを組んできた。3月11日、上野の自宅を10メートル超の津波が襲った。遠い仮設住宅に移って会う時間は減ったが、大会中の宿泊先で2人部屋になった。「地元のため9年間で最高のプレーをしよう」。前夜、寝る前に誓った。

 県外の仲間へ-。5月末に神港学園(兵庫)に招待され、交流した。その後、氏家の母美知子さん(46)が北原光広監督(58)に謝礼の手紙を書くと「苦しい時は伸びる時」と書かれた色紙が返ってきた。氏家は枕元に置き、鳩川琢磨主将(3年)にはメールを打った。「お互いに勝ち続けて甲子園で会おう」。約束がモチベーションになった。

 県内の仲間へ-。今大会で破った久慈などの沿岸校や、既に敗れた一関一など親友のいる内陸校がある。試合前、美知子さんに「彼らの分まで頑張る」と言った氏家は「これで沿岸の高校は消えるけど、うちだけじゃなく、どこも健闘した。あとは内陸の仲間が、岩手を元気づけてくれる」。県や学校の垣根を越えた友情は、届かなかった甲子園にも負けない価値がある。【木下淳】