<高校野球鹿児島大会:薩摩中央4-2鹿児島実>◇22日◇準決勝

 ノーシード校が強豪撃破だ。鹿児島大会では薩摩中央がセンバツ8強の鹿児島実を破り初の決勝進出を果たした。エース崎山貴斗投手(3年)が、鹿児島実の強力打線に8安打を許しながら2失点に抑える好投を見せた。

 まるで「なでしこジャパン」のような快進撃だ。ノーシードで開幕前は全く名前も挙がらなかった薩摩中央が、センバツ8強、第1シードの横綱鹿児島実を撃破し初めての決勝進出を決めた。「子どもたちに感謝したい。持っている力を全部出し切りました」と就任23年目の神村泰幸監督(48)は決勝どころか4強進出も初。金星を挙げたナインを頼もしく見つめた。

 エース崎山は強打の相手にもひるまなかった。1回、いきなり2死三塁とされたが冷静に鹿実の4番をうちとった。3回にスクイズで1点を先制されても焦りはなかった。毎回走者を背負いながら粘り強く投げ続け、追加点は8回のソロ本塁打だけにとどめた。試合前日、富満祐太捕手(3年)と「格上の相手だし、逃げずにどんどん行こう」と決めた。走者が出ても逃げずに内角を攻め決定打は打たせなかった。崎山は「鹿児島実とやれるのがうれしかった。今日は楽しかったです」と笑みを浮かべた。

 崎山、富満のバッテリーは小6からのコンビで小学時代は全国大会へ出場した。高校進学時には私立強豪校からの誘いもあったが、地元で野球をやりたいと薩摩中央へ進んだ。「全国大会へ行ったとき地元の人がすごく応援してくれたから、地元で頑張って私立を倒したいと思った」と崎山。富満は1度は私立強豪校へ進んだが「地元で野球がしたい」と薩摩中央へ転校。規定で1年間試合出場はできないとわかっていたが、それでも地元の道を選択した。「今はこのチームで良かったと思います」。7回2死二、三塁でダメ押しとなる2点適時打を放ち、相棒を援護した。遠いあこがれだった甲子園まであと1歩と迫った。「甲子園なんて考えてないです。悔いのないよう自分の投球します」と崎山。夏の主役に躍り出たシンデレラボーイが夢をつかむ。【前田泰子】

 ◆薩摩中央の快進撃

 ノーシードからのスタートだったが2回戦でシードの鹿児島城西を5-2で撃破。勢い乗った3回戦は沖永良部に8回コールド勝ち。準々決勝の伊集院戦も13-3で5回コールド勝ちで初の4強入り。崎山は3回戦以外はすべて完投勝利。過去の夏の大会は薩摩中央としては昨年の2回戦が最高。