<高校野球群馬大会:利根商5-4群馬高専>◇10日◇2回戦◇高崎城南

 実録「巨人の星」は野手だった!?

 利根商が、8回に3点ビハインドをひっくり返す逆転勝利で初戦を突破した。4番一塁、星野巨人(なおと)主将(3年)が反撃の口火を切る適時打を放ち、勝ち越しのホームを踏んだ。セ・リーグでは巨人が独走態勢を固めつつある中、群馬では巨人が、利根商に初の甲子園出場をもたらす?

 名前通りのでっかい活躍だった。3点を追う8回1死満塁、星野は内角をえぐる直球を力いっぱい振り抜いた。打球は右前に鋭く落ち、1人が生還。後続の適時打で4点目のホームを踏むと、右手を握り締め雄たけびを上げた。「朝6時から打撃練習してきたので。みんなつないでくれて、ここは自分が返さなきゃいけないと」。主将も務める4番はさわやかに言った。

 巨人。「なおと」と読むが、一度見たら忘れられない名前だ。父孝俊さん(54)が大の巨人ファン。「テレビはいつも野球中継」という家庭で、東京ドームに何度も連れて行ってもらい、いつしか自分もファンになっていた。「真剣にできるスポーツは野球だけなんですよね」という、筋金入りの野球少年が育った。

 しかも名字が「星野」ときたら、漫画「巨人の星」を連想せずにはいられない。主人公・星飛雄馬は、父一徹にスパルタ教育を施された。実は星野も、父に指導された過去を持つ。孝俊さんは小学生時代の監督だ。自然と周囲より厳しくされたが、その中に愛情も見え隠れした。「家にネットを張って、ティーにも付き合ってくれた。あれがなかったら、今日の打球は打ててないと思います」。

 今も下宿先から帰省すると、父とキャッチボールに興じる。「自分の名前、気に入ってます」と星野。3年前、同じく利根商の主将だった兄大夢(ひろむ)さん(20)は4回戦で負けた。昨夏は8強敗退。次戦は強豪・前橋商が相手だが、今年は“スター”巨人くんが、その勝負強さを発揮して同校初の全国切符を手に入れるかもしれない。【鎌田良美】