<高校野球静岡大会:静岡商8-5御殿場西>◇15日◇2回戦◇清水庵原

 大型ルーキーが思わぬ形で公式戦デビューした。第3シード静岡商は延長14回の末、御殿場西を破った。エース中本聖エリヤ(3年)が両足をつって6回途中で降板するなどアクシデントが続く中、延長14回1死二塁から4番手で国松歩(あと)投手(1年)が登板。安倍川中時代から評判の右腕が高校初の公式戦マウンドを無失点で切り抜け、初戦突破に貢献した。

 3点リードの延長14回1死二塁、1年生で11番を背負う国松がマウンドに上がった。最初の打者に四球。空振り三振を奪った後に死球を与え満塁となった。本塁打が出れば逆転サヨナラ負けとなる。初球を打たれたが自分の前に転がってきた。落ち着いて一塁に送球。公式戦デビューを締めた。球数は13球。安倍川中時代には県外の甲子園強豪校からも誘われた最速142キロ右腕も、本格的に硬球を握って3カ月。実はこの間、県内高校野球関係者の最大の話題は「国松は夏の大会に投げるのか」だった。そんな注目と裏腹に、大器は高校生活初の責任を果たし「やっと終わった」とホッとしていた。

 5回を終え5-0と快勝ペースだったチームにまさかの事態が続いた。まず、中本の両足がつった。グラウンド整備中にアイシングして6回も続投したが、先頭打者から3連打を浴び2失点でKO。白滝康二投手(2年)が1失点で切り抜けたが、8回に追いつかれ延長戦に突入した。10回からは今本茂雄投手(3年)が登板。安定した投球を見せると同14回、3番吉永祐太郎捕手(3年)の2点適時打などで3得点。後は今本が締めるだけだった。

 ところが、1死二塁となったところでつっていた腕などが限界に達し降板。投手陣だけではなく、試合後はほとんどの選手が横たわり、アイシングなどを受けた。気温30度のグラウンド、初戦の緊張感、息詰まる試合展開などが影響したようで、ヒーローの吉永も座ったまま取材を受けた。投手でもある有賀純内野手(3年)は試合後、大事を取って救急車で搬送された。

 6年ぶりの甲子園を狙うチームが迎えたピンチを救う形となった国松は「これ以上のピンチはないと思うので、これからもきっちり抑えたい」と話した。3回戦は21日。先輩たちの回復状況とともに、身長178センチの16歳への注目度もがぜんアップした。【石原正二郎】