<高校野球鹿児島大会:鹿児島実2-1川内>◇27日◇準決勝◇県立鴨池球場

 ノーシードから勝ち進んだ鹿児島実が川内を延長12回で破り、2年ぶりの決勝進出を決めた。1-1で迎えた12回裏2死満塁で8番沢辺太郎二塁手(3年)が四球を選び、押し出しでサヨナラ勝ち。昨夏、準決勝で敗れた悔しい思いを力に甲子園を目指す。優勝候補の神村学園は加治木工を下し、2年連続決勝進出を決めた。今日28日は福岡、鹿児島、山口で決勝が行われ九州、山口地区の代表が出そろう。

 鹿児島の高校野球を引っ張ってきた伝統のユニホームが、勝利に導いてくれた。12回2死満塁。フルカウントから打席の沢辺が外角へ外れた8球目を見逃した。押し出しサヨナラ勝ち。ノーシードからスタートした鹿児島実ナインがようやく、頂上の1歩手前までやってきた。

 「意地ですね。鹿児島実の意地。九州を、鹿児島を引っ張ってきたという意地でここまで来られたんだと思います」

 宮下正一監督(39)はこの夏の苦しい戦いを振り返った。

 川内のアンダースロー右腕に苦しめられた。4回にクリーンアップの3連打で1点を先制したが追加点を奪えなかった。6回以降は毎回走者を出すが、チャンスで打線がつながらず、要所をうまく抑えられて11安打でわずか1点。「途中で決めなければいけない場面はたくさんあった」と宮下監督。それでも、4回戦の徳之島戦から1点差で勝ち上がってきた粘りで、最後に勝ちをつかんだ。

 宮下監督が「ヘタクソ軍団」と呼ぶナインはこの夏、泥臭く1点をもぎ取って勝ち上がり成長してきた。昨夏はセンバツ8強で夏も優勝確実と言われながら4強で敗退。ベンチ入りしていた選手は1人しか残らず、まさにゼロからのスタートだった。県内一番の名門が秋、春の県大会は3回戦敗退で8強にも入れず、公式戦上位チームが出場する夏の前哨戦「NHK旗」は出場できなかった。「春も秋も負けて悔しかった。夏にぶつけるしかないんです。開き直りが勝ちにつながっていると思います」と堀祐太朗主将(3年)は言う。

 どん底からはい上がり、甲子園へ王手をかけた。決勝の相手は優勝候補の神村学園。「ひと泡ふかせてやろうという思い。ワクワクしますね」と宮下監督。苦しい延長戦を乗り切りムードは最高潮。昨夏の先輩が果たせなかった甲子園切符をつかむ。【前田泰子】

 ◆鹿児島実VS川内

 私立の名門校、鹿児島実と県立の強豪校の川内は県内のライバル。98年の決勝は県屈指の左腕と言われた杉内(巨人)を擁する鹿児島実と、木佐貫(オリックス)を擁する川内が対戦。結果は3-1で鹿児島実が優勝したが、杉内が9奪三振、木佐貫が5奪三振で白熱した投手戦となった。杉内自身も「鹿児島での一番の思い出の試合」と言う。最近では10年の夏の準々決勝で対戦し鹿児島実が2ー1で勝っている。