<全国高校野球選手権:作新学院3-2仙台育英>◇19日◇3回戦

 作新学院(栃木)が2年連続の8強進出を決めた。仙台育英(宮城)と対戦。2-2の同点で迎えた7回1死二塁、2番鶴田剛也外野手(3年)が右前へ勝ち越し打を放った。立正大淞南(島根)との2回戦でスタメンを外れたが、勝負どころで意地を見せた。明日21日の準々決勝第1試合(9時)で東海大甲府(山梨)と対戦する。

 打席に向かう時、鶴田は心の中で決めていた。「引っ張って、低い打球を打とう」。同点のまま足踏み状態が続いていた7回1死二塁。カウント1ボール1ストライクから135キロのシュート回転する直球を右前へはじき返した。二塁から石井をホームに迎え入れた。「自分の中でガッツポーズはやめていた。心の中でしました」と日焼けした顔ではにかんだ。

 第1打席は三ゴロ、第2、第3打席では中堅へ平凡な飛球を打ち上げていた。自分の打席になると、相手外野陣がレフトに寄るシフトが視界に入っていた。飛球を打ち上げては、つなぎ役である2番打者の役割を果たせない。反省をもとに大事な場面で結果を残した。

 2年時からレギュラーで、発奮材料があった。3季連続の甲子園。2回戦の立正大淞南戦で、初めてスタメンから外れた。「かなり落ち込んだ。涙が出そうなくらいだった」。途中出場し、2打数1安打と意地を見せた。翌日の練習。不安は消えなかったが「落ち込んでいても仕方ない。チャンスはある」と、外野キャプテンとして積極的に声を出した。練習中に、小針監督から「頑張れキャプテン」と、声をかけられた。「心にきた」と感激していた。

 この日の試合前。指示がなかったため、シートノックで1、2回戦で守った左翼の位置についた。最後に本塁送球を終えると、電光掲示板の2番打者の枠にある「8

 鶴田」が目に飛び込んだ。背番号は7だが、今春の関東大会まで守っていた中堅手でスタメンに復帰していた。

 苦しんだ日々を思い出した。思い返せば今春センバツ後、練習試合でベースを踏んだ際に右足首を捻挫した。約2週間練習を休んだが、その後に頑張りを示すと、栃木大会ではレギュラーとして出場していた。座右の銘は「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」。努力は報われると、改めて感じていた。

 チームは、2年連続で準々決勝に進出した。鶴田は7回の適時打を放った後に、二塁塁上で送球が脇腹を直撃し、臨時代走を送られるアクシデントもあった。「一瞬息ができなかった。最初は痛かったけど、大丈夫でした」とあどけない笑顔を見せていた。【斎藤直樹】