<高校野球栃木大会:作新学院7-2栃木工>◇24日◇準々決勝◇栃木県総合運動公園野球場

 曇天を吹き飛ばす1発で、作新学院を5年連続ベスト4へ導いた。今春の県大会から背番号「3」を背負う4番・中村幸一郎一塁手(2年)が、公式戦初となる満塁本塁打を左翼席に打ち込んだ。

 小雨が降りしきる1回裏無死満塁だった。「楽しむつもりでした」と左打席に立った。カウント1ボール、高めの外角直球を見逃さなかった。逆らわずに打った打球はぐんぐんと伸び、切れることなく左翼席へ吸い込まれた。「絶対切れると思っていました」と話すように、ボールの行方を追いながらゆっくりと一塁ベースを回り、塁審の手が回ると駆け足で1周した。まさかのグランドスラムに「チョー気持ち良かったです」と笑顔を振りまいた。

 昨冬から取り組む素振りにはこだわりがある。「本数は決めてません」。自分が納得するまで振り続けているという。「長い時は1時間半ぐらい」と、マスコットバットで鋭さも磨いた。今大会は84センチのバットから83センチに変えて臨んだ。「小さな差だけどしっくりくる」と、よりコンパクトなスイングを心掛けた。

 「つなぎの4番」の意識が強い。2回2死一塁の場面では、左中間を破る適時二塁打を放った。小針崇宏監督(30)は「彼の持ち味。ホームランもよかったけど、こっちの方が価値ある」と評価。中村も「大振りにならず、肩を開かず」と謙虚な姿勢を見せた。準決勝は、今春県大会で2-9と敗れた佐野日大と対戦する。「春負けた相手。次も打ちたい」と、自らのバットでリベンジを果たす。【佐々木隆史】

 ◆中村幸一郎(なかむら・こういちろう)1996年(平8)4月4日生まれ、栃木県宇都宮市出身。小学1年から野球を始め、陽北中時代には宇都宮スターボーイズに所属。家族は両親と兄。176センチ、69キロ。左投げ左打ち。