<全国高校野球選手権:聖光学院4-3愛工大名電>◇9日◇1回戦

 聖光学院(福島)は酒谷遼外野手(3年)の代打本塁打を含む3打点の活躍で愛工大名電(愛知)に逆転勝ちした。

 聖光学院の“ラッキーボーイ”酒谷が、代打初球弾で空気を変えた。1点を追う5回裏に三重殺を決められ、6回表にさらに1点を許す最悪の展開。その裏、代打で登場すると、初球のスライダーに迷いなくバットを出した。「自分が勢いづけるという気持ちだった」と、右翼席へ反撃弾をたたき込んだ。

 これで気持ちに余裕が生まれ、7回2死満塁では、三遊間を破る逆転の2点適時打を放った。チームを救ったヒーローはお立ち台で「いいとこどりです」とはにかんだ。福島大会で左腕に苦戦していたため、この日は先発から外したという斎藤智也監督(50)も「しまった。スタメン起用しておけばよかった」と悔やむほどだった。

 勝負強い男だ。昨春センバツの横浜戦では、9回に代打で中前打。今夏の福島大会決勝の日大東北戦でも、2-4の8回裏2死から代打で中前打を放った。この日もベンチでは準備を怠らなかった。「初回から自分が出ているつもりでいました」と、愛工大名電の左腕エース東に合わせ、足を動かしながら、配球を分析した。「左打者には初球に変化球が来る」。読み通りに初球を狙い打ちするなど、2打数2安打3打点の活躍だった。

 大阪・茨木市出身で中学時は名門「オール枚方ボーイズ」に所属。大阪桐蔭のエース葛川やショート水谷らとプレーし全国制覇も経験した。だが、聖光学院ではレギュラー落ちするなど挫折も味わった。今春センバツでは2試合に出場も、無安打。「甲子園の悔しさはここでしか返せない」と乗り込んだ舞台で、背番号8が十分すぎるリベンジを果たした。【高場泉穂】

 ◆酒谷遼(さかたに・りょう)1995年(平7)5月3日、大阪・茨木市生まれ。三島小1の時、浜一タイガースで野球を始める。中学時代は硬式のオール枚方ボーイズに所属。中3のジャイアンツカップで優勝。聖光学院では1年秋からベンチ入り。家族は両親と兄。172センチ、73キロ。右投げ左打ち。