<高校野球熊本大会:熊本工11-9八代東>◇12日◇2回戦◇藤崎台

 昨夏代表の熊本工がコールド負け寸前からの大逆転で、八代東を下し初戦を突破した。初回から投打がかみ合わず、2-9で7回の攻撃を迎える大苦戦。7回に追いつき、8回に2点を勝ち越し。夏20度の甲子園出場を誇る名門が意地をみせた。今春、白血病のため17歳で亡くなった男子マネジャーの梅本健優さん(3年)のために執念を燃やした。

 天国から見守ってくれていただろう。白血病で若くして亡くなった梅本マネジャーへの思いが、白球に乗り移った。9-9の同点で迎えた8回1死一、三塁。「梅本さんのため、ここなところで負けるわけにはいかなかった」。昨夏の甲子園で1年生5番として活躍した3番の高木栄志外野手(2年)が意地の一打だ。

 「絶対、甲子園に連れていく」-。2ストライクからの直球を思いきり強振した。左前への決勝適時打。一塁で飛び出た派手な右手のガッツポーズに気迫が込められていた。

 7回コールド負け寸前からの大逆転劇だ。林幸義監督(67)が「初戦で負けるのがもったいないぐらい」と評した八代東のエース河瀬の緩急をつけた丁寧な投球に大苦戦。6回まで2安打2点に抑え込まれた。エース山本力也(3年)ら投手陣も調子が上がらず、7回に5点を奪われ2-9にリードを広げられた。だが、万事休すと思われた7回裏無死で河瀬が右手をつっての降板。ここから「夏はつったりした方が負け。あそこでうちのムードになった」(林幸義監督)の言葉通り反撃を開始。そんな好機に、昨夏甲子園メンバーが4人残り夏20度の出場を誇る熊本工打線が火を噴かないはずはない。

 7回に打者11人を送り出す猛攻で息を吹き返し一挙7点。土壇場で同点に追いつくと勢いは止まらず、8回の好機を迎えていた。高木は試合後、11-9の辛勝に「今日(12日)の結果じゃ、ふがいなさ過ぎる」と猛烈に反省した。だが「(甲子園出場で)少し気が抜けていた部分もあったかもしれない。気持ちで負けないよう、次も甲子園につながる試合にしたい」と前を向いた。甲子園への道は、いつも支えてくれた梅本さんへの思いとともに歩む。【菊川光一】