<全国高校野球選手権:鹿屋中央2-1市和歌山>◇13日◇1回戦

 鹿屋中央(鹿児島)が相手の思わぬミスで延長12回サヨナラ勝ちした。甲子園初采配の山本信也監督(41)が積極采配を貫き、市和歌山を振り切った。大隅半島から夏初出場での甲子園1勝は鹿児島県勢春夏通算90勝となった。

 勝った?

 鹿屋中央ナインが一瞬、間を置いた後、笑顔でベンチを飛び出した。サヨナラ二塁内野安打で初出場初勝利だ。

 延長12回1死一、三塁。米沢佑弥(3年)の二塁へのゴロを相手二塁手が判断を誤り一塁へ送球。スタートを切っていた三塁走者がその間にサヨナラのホームを踏んだ。

 米沢

 併殺と思った。一塁に投げたので三塁走者が走っていないと思った。三塁を見たらいなかったのでびっくりしました。

 お立ち台でもまだ信じられないという表情だった。

 超満員4万6000人が見守った、息詰まる延長戦。8回に中前同点適時打を放った徳重は「試合中に体感で5度くらい気温が上がった。中盤、集中力がやばかったです」と、暑さと緊張とも戦ったことを明かした。

 積極策で攻め抜いたことが運を引き寄せた。1点を追う8回、山本監督は「第六感で西村が相手に合うと思った」とそこまで1失点のエース左腕で主将の七島を下げ代打西村を送った。西村が左前安打で出塁。2死二塁から徳重の中前に抜けそうな打球は二塁ベースにぶつかって方向が変わり、その間に二塁走者が生還した。4併殺でも打たせ、継投も迷わなかった。

 サヨナラ打の米沢は、七島の後を受け9回から4回2安打無失点。最近は座禅の本を読んでいる読書家左腕は、過酷なマウンドでも平常心だった。

 米沢は鹿児島市内の出身だが「歴史をつくるということをしたかった」と、鹿屋中央を選んだ。スタメンには木原ら種子島出身も3人いる。全寮制で恋愛も携帯電話も禁止。ナインは風呂に一緒に入り裸の付き合いで結束を高めてきた。

 台風11号で2日延期も味方につけた。練習場が確保できない高校が多い中、2日とも室内練習場を確保ししっかり練習ができた。幸運な流れで勢いに乗り、鹿児島県勢初の全国制覇へ挑戦する。【石橋隆雄】