<センバツ高校野球:横浜2-6北大津>◇27日◇2回戦

 北大津(滋賀)が優勝候補の横浜(神奈川)を破る大金星を挙げた。4番石川駿二塁手(3年)のセンバツ通算600号を含む2アーチで、2年ぶりの優勝を目指した横浜を圧倒した。

 最後の打者を併殺打に打ち取ると、北大津ナインの喜びが爆発した。春夏5度の日本一を誇る横浜に堂々の勝利。2失点完投のエース河合勇志投手(3年)は両手を突き上げ、雄たけびを上げた。「横浜は日本一のチーム。僕たちは全力を出そうと思っていた」。

 集中力が極限に達していた。4回、河合は左親指付け根に打球を受けながら、その裏の攻撃で2死一、三塁から貴重な2点タイムリー。「気持ちが高ぶっていたんで、痛みは感じなかった」。直球は自己最速141キロを記録し、得意の3種類のスライダーがさえた。興奮で前夜は3時間しか眠れなかったが、気合で134球を投げ抜いた。

 結束力が金星を呼び込んだ。開幕後、ミーティングの方式が変わった。指示待ちだった選手が率先して意見を出し合った。左打者7人が並ぶ横浜打線対策として、宮崎裕也監督(46)は外野手登録で、公式戦登板のない左腕の龍田旬一郎(3年)を先発させる「奇策」を提案。だがナインが話し合い、「河合に託そう」で一致した。指揮官は「今までこんなに面白いミーティングはなかった」と選手の成長に手応えを感じていた。

 恩返しを誓っていた。昨年12月3日、宮崎監督が「10年来の恩師」と慕う横浜の小倉清一郎部長(63)が来校。直接指導を受けた。ピッチングを教わった河合は「横浜は僕らとやっている野球が違うと感じた。野球観が変わった。こんなに頭を使うんだと思った。勝てたことで、小倉先生に恩返しできた」と笑った。

 甲子園で夏未勝利、春も2回戦進出が最高というチームが、初の1大会2勝をもぎ取るミラクル進撃。次は滋賀県勢5年ぶりの春8強をかけて、長野日大(長野)と対戦する。センバツ通算600号を含む2安打2打点の石川主将は「(1回戦の)東北、横浜に勝って、このまま終わるわけにはいかない。優勝します」と宣言。強豪校を連破し、表情は自信に満ちあふれていた。【大池和幸】