<高校野球青森大会>◇28日◇決勝

 青森山田が4-3で大湊を振り切り、6年連続10度目の甲子園出場を決めた。大湊に先制されたが、5回にスクイズで同点。6回に井戸川皓平左翼手(3年)の2点二塁打などで3点を挙げ、勝ち越した。3回1死から救援の井上貴滉(3年)が力投。9回の反撃も2点に抑え、逃げ切った。春は、よもやの地区予選敗退。猛練習に耐えノーシードから、大会連覇記録を更新するV6の金字塔を打ち立てた。

 劇的な幕切れだった。9回表、1点差に詰め寄られなおも2死一、三塁のピンチ。迎えるのは、2回に先制弾を浴びた大湊のエース和田。快音とともに鋭いライナーが飛ぶ。一瞬ヒヤリとさせた白球を、ショート宮守淳貴(3年)が好捕。「やったあ!」。井上と氏家彩斗捕手(3年)が抱き合う。歓喜の雄たけびを上げながらナインがダッシュで駆け寄る。ついにV6達成だ。

 苦しい1年を象徴する一戦だった。満を持して送り出した先発・斎藤英輔(3年)が1発で先制され、3回1死一、二塁で降板。打線も4回まで2安打と和田を打ちあぐんだ。だが、3日間かけたという和田対策が後半に実る。5回、先頭の井戸川皓平(3年)が中越えの二塁打。1死三塁からスクイズで追いついた。6回には宮守のタイムリーと井戸川の2点二塁打で逆転。攻略に成功した。

 困難な道のりだった。昨秋県大会決勝で光星学院に敗れ、07年春から続いた県内公式戦連勝記録は43でストップ。今春は地区予選で青森北に敗れ、22年ぶりに県大会不出場。秋はエース斎藤が腰を痛め、春は前主将で攻守の要の宮守が右足を痛め戦線離脱。チームに危機感が漂った。

 「春の地区予選で負けた後、つらい苦しい練習をさせた。よく耐えてくれた」と渋谷良弥監督(62)はナインをねぎらった。5月は早朝4時起きで7時まで練習。午後は2時から3時間、ひたすら走り続けた。キャッチボールなど基本の反復も繰り返した。「正直、悲鳴を上げる選手もいた。でも、あれがあって今日の勝利を迎えられた」と中村篤人主将(3年)はいう。

 厳しいばかりではない。青森山田中時代、全日本シニアの4番を打った井戸川だが、今大会背番号15でやっとベンチ入り。初戦(対板柳)で渋谷監督から「好きなコースだけ打て」とアドバイスを受けた。「あれで気が楽になった」と井戸川。チーム全体が1戦ごとに自信を取り戻し、公式戦の経験不足をはね返した。

 渋谷監督にとっては、日大山形時代から春夏合わせて22度目の甲子園。選手育成、チーム強化、試合の采配にベテラン指導者の手腕が、さえわたった。中村は「自分たちを信じてくれ、自分たちも監督さんを信じた」とウイニングボールを手渡した。「甲子園ではベスト8を突破したい」と渋谷監督は力強く宣言した。【北村宏平】