<高校野球神奈川大会>◇29日◇決勝

 横浜隼人が桐蔭学園を6-5で破り、春夏を通じて初の甲子園切符をつかんだ。延長11回、2死二塁から与那覇明外野手(3年)が二塁強襲打してサヨナラ勝ちした。173センチの右腕・今岡一平投手(2年)は165球を投げ抜いた。阪神のユニホームにそっくりの「ハマトラ軍団」が甲子園に出陣する。

 横浜隼人ナインは、泣き叫びながらグラウンドへ走った。同点で迎えた延長11回2死二塁、カウント2-2から、与那覇(よなは)が、外角直球に食らい付いた。打球は二塁手の前で大きくバウンドし外野へ抜けた。サヨナラ走者が生還した。今大会3度目の延長戦、3度目のサヨナラ勝ち。外野席まで超満員で埋まった横浜スタジアムが大歓声で沸いた。水谷哲也監督(44)は「選手たちが頑張ってくれた…」と声を震わせ、男泣きした。

 173センチの小さなエース今岡が、この日も名門の前に立ちはだかった。165球で、延長11回を完投した。準々決勝の横浜戦から3戦合計473球を1人で投げ切った。頼れる2年生は涙を見せつつ「連投で多少肩ひじ張ってたが、後半は球が走ってきた。隼人の打線を信じてたので、くじけそうなときはなかった」と先輩たちを信じた。

 勝負の分かれ目は、同点の10回表だった。1死一、三塁、カウント1-2から桐蔭学園がしかけたスクイズを外角へ大きくウエストして外した。桐蔭学園・土屋監督は勝利した慶応戦でも同じカウントからスクイズを成功させていた。名将の采配を読み切ったプレー。船木吉裕捕手(3年)は「アウトにした瞬間、流れがこっちにきた」と笑顔を見せた。

 全員が地元中学出身の生粋のハマっ子たち。水谷監督は「神奈川は松坂、涌井…スーパースターがいないと勝てない県だと思っていた。『それは違うよ』と選手たちが教えてくれた」と言う。選手からは愛情を込めて、陰では「ボス」と呼ばれている。試合後は3度宙を舞って、また泣いた。

 「ボス」がいよいよ聖地に乗り込む。縦縞のユニホームは甲子園でよく映える。「ハマトラ軍団」は甲子園で大暴れを誓った。

 ◆横浜隼人

 1977年(昭52)創立の私立校。生徒数は1650人(うち女子638人)。野球部は77年創部。部員数108人。今回が春夏通じて初の甲子園出場となる。主なOBは阪神小宮山慎二捕手ら。所在地は横浜市瀬谷区阿久和南1の3の1。鈴木紀代子校長。