<高校野球静岡大会>◇29日◇準々決勝

 初優勝を目指す常葉学園橘が、春夏連続甲子園を狙った掛川西に6-1で逆転勝ちし、4年ぶりの4強進出を決めた。7回に山岸龍大中堅手(2年)の2点適時打など打者一巡の猛攻で一気に逆転。庄司隼人投手(3年)も10奪三振で2安打に封じて王者を破った。準決勝は30日に静岡・草薙球場で行われる。

 1度目覚めた常葉橘の強力打線は、もう止まらなかった。1点を追う7回裏、川口雄佑一塁手(3年)の左前打から無死満塁とした。それまでわずか3安打。ようやく迎えた最大の好機に、8番山岸が応えた。中前2点適時打で逆転し、ここから代打藤沢康平(3年)小岱太志三塁手(2年)の連続適時打が出て打者一巡の猛攻。一挙6点を奪い、王者掛川西をわずか1イニングだけで粉砕した。

 初戦静岡戦、4回戦加藤学園戦でも見せた、ビッグイニングの再現。黒沢学監督(32)は「山岸はラッキーボーイ的存在なのかな」と殊勲者に目を見張った。捕手から転向した春はベンチ外。「外野手は打撃力をつけないと」と週に1度、寮から実家の島田に戻ると打撃センターに通って平均500球を打ち込んできた。努力が認められて「8番」を手にした今大会。地元島田での一打に「先輩たちともっと野球がしたい一心で打ちました」と笑った。

 会心の逆転劇。その基盤は、エース庄司の快投だった。3試合で35安打32得点の掛西打線をわずか2安打。7回表には「全部三振に取って流れを呼び込もう」と、狙って3者連続三振を奪い、その裏の猛攻を呼び込んだ。5連続奪三振を含む10奪三振。「今日はボールに勢いがあった。打線が打ってくれると信じて投げた」と笑顔を見せた。

 県屈指の好投手は、大会中に進化していた。2回戦の磐田東戦では、勝負するか迷った末に投げた球を痛打された。反省を生かしたこの日の4回は1死二塁で「江塚を歩かせて(次の)小崎と勝負しようと決断した」。結果は投ゴロ。併殺こそ奪えず次に失点したが、納得の一球だった。

 投打が最高にかみあってつかんだ4年ぶりの4強。決勝まで最大3連戦が待ち受けるが、それでも庄司は「ベストを尽くすだけ」。初めての甲子園が、いよいよ姿を見せ始めた。