<高校野球熊本大会>◇30日◇決勝

 伝統校の熊本工が九州学院を7-6で破り、3年ぶり19度目の甲子園出場を決めた。昨夏は開幕試合で初戦敗退。1年後のリベンジに燃えたナインが、九州学院との伝統校対決を制して悲願を達成した。

 あふれ出る喜びを誰も止められなかった。スタンドから色とりどりの紙テープが投げ込まれる中、熊本工ナインが作った歓喜の輪はなかなか収まることはなかった。「今年はうれしさもひとしおですね」。胴上げされた林幸義監督(62)は喜びをかみしめた。

 余裕のムードが最後に冷や冷や勝利に変わった。3点差で迎えた最終回。2番手の池田大希(3年)が3安打で2点を返され、完全に相手の追い上げムードになった。池田は2死一塁から最後の打者を中飛に抑えゲームセット。辛くも1点差で勝利を決めた。

 県内でどこよりも長い1年間を過ごした。昨年は開幕戦で8年ぶりの初戦敗退。常に甲子園出場を期待される伝統校だけに、林幸義監督(62)は進退も考えたほどだった。ナインは初戦敗退に泣きじゃくる先輩たちを目の当たりにした。「悔しかったです。絶対に自分たちが甲子園に行ってリベンジしてやると思いました」と田中屋光宏主将(3年)は1年前を思い起こした。

 昨秋は県大会準優勝で九州大会に出場したが春は4強どまり。目標を見失いかけて練習に緊張感がなくなったときもあった。春県大会後はチームに緊張感を呼び戻すために、コーチに任せていたノックを林監督が直接やるようになった。「監督にノックをしてもらって気合が入りました」と田中屋主将が言うように、ナインの目の色が変わってきた。「みんな不平不満も言わず頑張った。練習を一生懸命したから結果が出たんだと思います」と林監督はたくましくなった選手を見つめた。

 今大会6試合で本塁打はないが、コツコツと点を重ねる粘り強さがある。「このチームは特徴がないのが特徴かな」と林監督は戦力を分析した。ナインは3年ぶりの甲子園で昨年の分まで大暴れする。【前田泰子】

 ◆熊本工

 1898年(明31)創立の県立校。熊本県立工業学校から51年に現校名に。全日制と定時制があり全日制は機械、電気、電子、土木科など10学科。生徒数1172人(女子220人)。野球部は22年創部で部員数93人。甲子園は春20度、夏は19度目。OBに元巨人の川上哲治氏、元西武の伊東勤氏、広島前田智徳、中日荒木雅博ら。所在地は熊本市上京塚町5の1。拾雄正光校長。