<高校野球愛知大会>◇30日◇決勝

 中京大中京が刈谷を5-0で下し、5年ぶり25度目の夏の甲子園出場を決めた。プロ注目の堂林翔太投手(3年)が被安打3で、公式戦初完封の快投を演じ、チームをけん引。全6試合で2ケタ安打を記録した強打戦も売り物に、4強入りした82年以来27年ぶりの春夏連続甲子園に臨む。

 最後までエースは冷静だった。5点リードで迎えた9回。2死走者なしの場面で最後の打者を遊ゴロに打ち取ると、堂林は右手でグラブをポンッとたたいて、ニコリとほほ笑んだだけ。派手なガッツポーズも雄たけびもなしだ。「今日は直球とスライダーが低めに決まった。やっと持ち味を出せた」と公式戦で自身初の完封勝ちをかみしめた。

 決勝でやっと本来の投球を取り戻した。直球は130キロ前半だったが、持ち味の制球力がさえた。ボールを低めに集め、刈谷打線を3安打。アウト27個中19個は内野ゴロだった。「初回に点をとってもらったので、乗っていけた」という。4回以降で許した走者は8回の四球による1度だけ。二塁を踏ませない完ぺきな投球だった。

 悩み抜いた大会だった。4月の練習試合で左ひざ後十字靱帯(じんたい)損傷を負った。実戦復帰は大会1カ月前の6月。投げ込みと走り込みが大幅に遅れた。「周りが夏に向けて練習する中で焦りもあった」。今大会中は試合後に球場からユニホーム姿で約7キロ離れた学校まで走り、投球練習をしたこともあった。急ピッチで仕上げてきた。

 春夏連続出場は27年ぶり。当時は後にプロ入りした野中徹博投手(元ヤクルト)紀藤真琴投手(元中日)らの活躍で春夏ともに4強入りした。現チームは「エースで4番」の堂林を中心にチーム打率4割7分4厘の強打が売り。この日4打数1安打に終わった堂林は「エースで4番である限り、両方で自分が納得するプレーをしたい。もちろん日本一を目指します」と力強く宣言した。【桝井聡】

 ◆中京大中京

 1923年(大12)に中京商業学校として創立された私立校。95年に現校名。生徒数は1175人(女子696人)。野球部も23年創部。甲子園には春29回、夏24回出場。卒業生にはフィギュアスケートの安藤美姫、浅田真央らがいる。所在地は名古屋市昭和区川名山町122。伊神勝彦校長。