<高校野球静岡大会>◇7月31日◇決勝

 庄司が勝った!!

 常葉学園橘が10-0で浜名に勝ち、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。エース庄司隼人(3年)が打っては2打席連続本塁打を含む3安打3打点、投げても自己最速タイの147キロを記録して6安打完封の大活躍。前日にサヨナラ安打を放った稲角航平遊撃手(2年)も2本の本塁打を放つなど15安打の猛攻で、悲願の全国切符を手にした。全国大会の組み合わせ抽選は5日に行われる。

 笑顔で駆け寄る仲間を前に、庄司は派手なガッツポーズを見せなかった。ただホッと息をつき、もみくちゃにされた輪からもこっそり抜け出た。「あぁ、終わったんだな」。徐々にこみ上げる実感。今大会830球を投げ終えたエースが、やっと肩の荷を降ろした。目が、ほのかに赤く染まった。ついに頂点に立った。

 「ケタ違い」を、この日は打席で見せつけた。初回第1打席で右脇腹に死球、3回表には強襲打を右太ももに受けた。ともにしばらく動けなかった。だが、1-0で迎えた4回第2打席の2球目。真ん中高めのカーブを右翼上段へ運んだ。打った瞬間「やばかった」。5回1死一塁では、右中間へ再びカーブをたたき込んだ。人生初の1試合2本塁打。「打撃はおまけ」と笑うも、黒沢学監督(32)は「最初の本塁打で、みんなが積極的に行けて打ち始めた」と起爆剤になった。

 雨で日程がずれて迎えた準々決勝からの3連戦。2日間で288球を投げて、疲労はピークだった。だが、前日は鍼灸(しんきゅう)師の兄明史さん(23)にマッサージを受けて調整。最終回の121球目には、自己最速タイの147キロも出した。「疲れは関係なく、今までの野球人生で一番楽しもうと思った。みんなと最高の野球ができた」。最高の笑顔で振り返った。

 中3時の夏に軟式で144キロをマーク。高校公式デビューの東海大翔洋戦では3回で7三振を奪い、バックネット裏で見た小泉泰樹主将(3年)は「こいつがいれば甲子園へ行ける」と感じた。だが、最初の2年間は伸び悩み、苦しんだ。

 今春2、3年生でセンバツを見に行った。昨春も遠征帰りに寄ったが、今年は観戦が目的。「目指している場所。雰囲気を味わせようと思って」(黒沢監督)。励まし合う選手たちを見て、仲間の大切さを痛感。後半に崩れる「独り相撲」から「打たれてもみんなが守ってくれる」と変わった。その「余裕」が、仲間を甲子園へと導いた。「1つの壁を越えたかな」と庄司。最高の夏に、まだ続きができた。【今村健人】