<高校野球岩手大会>◇19日◇3回戦

 久慈の左腕エース菊地和大(3年)が、春季地区大会から10戦連続完投で、盛岡北を2-1で下した。快投を続ける三陸の鉄腕だが、この日は「珍事」に見舞われた。

 8回表1死一塁。菊地がカウント「1-1」で盛岡北3番山崎大輔(3年)からストライクを奪い、下舘智哉捕手(3年)が一塁走者の盗塁を阻止。すると球審がチェンジを告げ、久慈ナインも打者の山崎もベンチへ戻った。だがストライクが1つ足りない。盛岡北ベンチが球審へ抗議。判定は覆り、8回表2死走者なしのカウント「2-1」から試合再開となった。

 ベンチに戻り氷で頭や首を冷やしていた菊地。再開まで5分ほど要した。気持ちが切れてもおかしくない。だが「あと1球ですよね」。君ヶ洞卓朗監督(30)に尋ねて淡々とマウンドへ向かうと、2球で遊ゴロに仕留めて戻ってきた。

 春季県大会準決勝(専大北上戦)でも、本塁打を放ちながら一塁走者を追い越してしまった。今回は判定での珍事だったが「ちゃんと集中して相手を切ろうと思った」と問題にはしなかった。

 これで春季地区大会から10戦連続完投。さらに初戦に引き続き1点差と精神的にきつい試合だったが「粘り強く接戦で勝つのが自分たちの野球ですから」。2戦連続無四球も調子が良い証拠だ。

 次戦は好投手、伊藤直道(3年)擁する水沢戦。またも接戦が予想されるが「点差が開くと気が抜ける。接戦で気持ちをつなげていくのがテーマですから」と、三陸の鉄腕は笑った。【三須一紀】