<高校野球茨城大会>◇27日◇決勝

 茨城は水戸商を7度甲子園に導いた名将・橋本実監督(62)が就任3年目で水城を県チャンピオンに導いた。

 橋本監督が、孫ほどの選手の手で、4度宙に舞った。「本当にうれしい。まさかこの年になって胴上げされると思っていなかったから」。霞ケ浦を11-0で下し、春夏通じて同校初の甲子園出場を決めた。水戸商を率いた01年センバツ以来、8度目の甲子園。「2度と踏めないだろうなと、寂しいと思っていた。また踏めるという実感がない」と感慨に浸った。

 名将のタクトで、選手も光り輝いた。先発の左腕大川将史投手(3年)は尻上がりに調子を上げ、5安打で今大会2度目の完封。開幕直前、水戸商時代にヤンキース井川慶を指導した同監督から、テークバックを小さくするよう勧められた。球威、制球力が格段にアップ。今大会は6試合、45回1/3を投げて失点2と抜群の安定感だった。「大会前は練習試合でも完封はなかった。球が走るようになった」とはにかんだ。

 橋本監督からメモを取るよう言われている。大川も、教わった配球を1年時から毎日書き留め、大会中何度も見返した。浅野恵太主将(3年)も「ノート3、4冊分ですが、言われたことは書いています」とうなずいた。

 橋本監督にとって、甲子園は01年のセンバツが最後。その後は他校で教頭、校長を務めた。グラウンドに戻るつもりはなかったが、「熱心に誘ってくれたのでやってみよう」と、08年から同校で復帰した。6年のブランクはあっても、「選手に勝つ経験をしてほしい」という思いは衰えず、昨夏までの最高成績が8強だったチームを一気に頂点まで押し上げた。水戸商を春夏通算7度、99年センバツでは準優勝に導いた62歳が、ピンストライプのユニホームで甲子園に帰ってくる。【今井恵太】