今季ドジャースタジアムに行くと、60周年の記念ロゴやポスターが目につく。同球場がオープンしたのは1962年なので56年たっているのだが、ドジャースがニューヨークのブルックリンからロサンゼルスに移転したのが1958年で、ちょうど60年になる。球団がロサンゼルスに移転後、新たに建設し4年後に完成したのがドジャースタジアム。メジャーではフェンウエイパーク(1912年オープン)、リグレーフィールド(1914年オープン)に次ぐ3番目に古い球場だ。

 しかし古めかしいこのドジャースタジアムも近年は改修工事が繰り返され、内部はきれいで豪華になっている。テレビの試合中継を通して見る球場外観の見た目とは随分、雰囲気が違うと思う。ホーム側のダグアウトから選手のクラブハウスに通じる通路は、まるで高級ホテルの廊下のようだ。通路の壁には野球の絵画が飾られているのだが、ドジャースタジアムの内部というのは他のどの球場よりもあらゆる通路が長く、延々と続く通路の壁に3メートル置きくらいに絵画が並べられているため、その数は大変なものになる。ホテルの廊下というより美術館のようだといってもいいかもしれない。

 絵画は、ドジャースの試合中の躍動感あふれるシーンを明るい色彩で描かれているものが多く、「これはカーショーだな」と、描かれている選手を特定できる作品もある。絵画を鑑賞することはストレス軽減や幸福感の増加といった効果があるそうだが、そこにあるいくつもの絵画を見ながら通路を通っていると、明るい色使いのせいもあってか確かに楽しい気分になってくる。他球場にも絵画を飾っているところはあるが、ドジャースタジアムはとにかく通路が長く美術館並みの数の絵画が並んでいるため、効果も大きいのかもしれない。選手が通路を通ってダグアウトへ出るとき、どれだけ絵画を見ているかは分からないが、球団が絵画効果を考えてこのような通路にしているのだとしたら、驚きのきめ細かさではないだろうか。

 もう一つ、改修後のドジャースタジアムで驚いたのは、データ部門のオフィスの様子だ。ドジャースといえばメジャー最大規模のデータ部門を擁することで知られているが、そのオフィスが想像を超えている。まず場所が、試合の行われているフィールドから驚くほど近くにある。部屋の雰囲気は、たぶん野球とその分析が好きでたまらない人以外は、そんなところで仕事はできないのではないだろうか、と思うようなところだ。その状況を許容できる人だけが、そこで働けるのではないかと思う。

 というわけで現在のドジャースタジアムは、外観とかけ離れた内部が面白い。通常は一般客が入れなくてもスタジアムツアーで見られる場所もあると思うので、機会があればお勧めだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)